【シブヤ109ラボ所長の#これ知ってないとやばみ】②

2018/12/22 06:20 更新


 あなたは今の若者のファッションブランドに対するこだわりがなくなっていることを知っていますか? ブランドにこだわりがないだけで、おしゃれには興味津々で、トレンドも押さえている。そんな若者が非常に多くなっています。

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みんながおしゃれに

 一番驚いたのは、渋谷に来街しているアラウンド20(15~24歳)の女子900人を対象に実施したウェブ調査で「好きなファッションブランド」を聴取してみたところ、「特になし」という回答が圧倒的に多い結果となったことです。

 自由回答での聴取だったので、面倒くさくて書かないだけでは?と思われるかもしれません。私たちも最初は「そんな馬鹿な…」と思いながら、毎月実施している渋谷109館内でも同様の内容を聴取しました。すると、ウェブ調査の結果と同様に、「特になし」や「特にブランドにこだわって服を買っていない」という回答が多く上がってきたのです。

 そして、好きなブランドとして上がってくるブランドも、「ジーユー」や「フォーエバー21」などのファストファッションブランドが多く、ウェブ調査も館内調査もほぼ変わらない結果です。

 調査結果だけ見ていると、今の若者はあまりおしゃれに興味がないように思われるかもしれませんが、実際に回答している子たちの服装を見てみると、みんなおしゃれに気を使っていて、ファッションに興味がないようにはとても見えません。むしろ全体的におしゃれの基準が上がっていて、あまりファッションセンスに自信がない子でも、「それなりに、おしゃれに見せられる」というのが現状となっています。

その日の気分や会う友達によってファッションテイストは変わる

ブランドよりテイスト

 どうしてこのようなことが起こっているのか。理由の一つは、ファストファッションの台頭です。彼女たちが小中学生のころからファストファッションブランドが日本に進出し、服の購入場所の選択肢として存在していました。ここから、「トレンドのファッションを、費用をかけずに楽しむ」ことが当たり前となりました。

 また、グループインタビューでは、「お金をかけてブランドを1着買うよりも、安くいろんなテイストのファッションを楽しみたい」という声を多く聞きます。これが、ブランドにこだわらなくなった一番の理由につながっているかもしれません。

 彼女たちは可処分所得も少ないため、価格を気にしていることはもちろんなのですが、その日の気分や一緒に遊ぶ友達に合わせてファッションテイストを変えているという特徴があり、服を「ブランド」ではなく「テイスト」を基準に選ぶ傾向にあります。

 この行動には、SNSが大きく影響しています。SNSで常に友人とつながっている状態で「周囲から見られている」ことを意識しており、同調志向も強いです。そして人とのつながりがオンライン・オフラインの両方に広がり、一人が複数のコミュニティーに属するようになったことから、コミュニティーに合わせて見せる自分を変えることもしばしばあり、それをファッションでも体現しているのです。

 また、SNSへの投稿を見据えて服装を決めることも多く、イベントの時に友達と「シミラールック」や「リンクコーデ」をすることはまさにその代表といえるでしょう。若者にとって、ブランドはあくまでもテイストを表現する際の要素の一部になっているようです。

 ●長田麻衣(おさだ・まい)

 シブヤ109ラボ所長。総合マーケティング会社にて、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て現職。毎月200人の若者と接する毎日を過ごしている。好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。今年の目標は、若者マーケッターとしてテレビ番組に出ること、腹筋を割ること。

(繊研新聞本紙10月12日付)



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