あっ!と言わせるショーウィンドーの作り方

2017/04/10 06:40 更新


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【センケンコミュニティー】あっ!と言わせるショーウィンドーの作り方

街を彩り、いつも驚きや発見がある商業施設のショーウィンドー。どんな思いを込めて制作しているのか、聞きました。

伊勢丹新宿本店 少しの違和感で発見を

 「店舗そのものがメディアとしての役割を担うなかで、ショーウィンドーは時代に合ったメッセージを伝える重要な場所」とするのは、本館・メンズ館合わせて合計21面のウィンドーを擁する伊勢丹新宿本店だ。

 ディスプレーのポイントは「見た瞬間に予測できるものではなく、違和感を少し見せることで興味を持ってもらい、発見してもらうこと」(小町谷春生営業本部マーケティング戦略部宣伝イベント装飾担当マネージャー)にある。

 例えば、現在(11日まで)のウィンドーは、店内で行っている日本の技術や文化、精神性を発信するキャンペーン「ジャパンセンスィズ」の表現として、桜をモチーフにしたグラフィックでデザインしている。

 とはいっても、ピンクの桜が満開に咲いているのではなく、朱赤や黒、白でミニマムに配色した。「季節感よりも、日本の美意識を象徴する間やシンプリティーを表現するために取り組んだ」ためだ。日本人が思い思いの解釈で見る桜を、見方によって多様な解釈ができる能の世界観とも重ね合わせたという。

 ウェブサイトの動画やビジュアルなど宣伝のチーム横断で連動し、毎回多くのデザイナー、アーティストと協業するため、長いものは1年近く前から準備する。ディスプレーの入れ替え作業は、閉店後の21時ごろから翌朝の開店前までに100人体制で一気に行う。展示期間は平均2週間、短いと1週間ほど。伊勢丹のディスプレーは桜のようにはかない。

 「テーマを設定するため議論を重ねること、生みの苦しみはありますが、やはり写真を撮ってくださるお客様を見た時はうれしいですね」と小町谷さん。


モノトーンの桜と、写真家・蜷川実花の桜の写真をプリントした協業ブランドの商品を展示している

クリスマスでは自然との共生をテーマにした

阪急うめだ本店 道行く人に驚きを与える

 7面の大きなショーウィンドーがパノラマで見渡せる圧巻の光景は、大阪の街の風物詩として老若男女問わず親しまれている。ただキレイと無難にこなすのではなく、道行く人たちをあっと驚かせるため、「見たことのないものを作る」ことに情熱を注ぐ。

 12年11月の全館開業を機に、ショーウィンドーの位置づけを見直した。その時々の売りの商品を紹介するというディスプレーの役割だったが、「劇場型百貨店」という新コンセプトを体現すべく、「見た人に驚きと感動を与える」ことを重視。購買につなげることを追うのではなく、「店のテーマをアート性をもって伝える」ことに注力している。

 開業前は2週間に1回ペースでウィンドーを入れ替えていたが、月1回に変更してじっくりと作り込むようになった。本店長から提示された年間の店のテーマをもとに、約1年前からどのようにウィンドーに落とし込むか、どのようなアーティストと組むかを、販売促進部ストアプロモーション計画部がディレクションしていく。

 心掛けているのは、「お客様が見たことのないもの、関係者が手掛けたことのないものを、無理は承知で実行すること」だ。

 「関係者全員が感動する」ものを作り上げるため、プランの段階で完成品の絵が浮かぶものは選ばず、あえて未知数の可能性に賭ける。現代美術家と組み、レザーで作った大きななめくじを飾るなど、社内で苦笑いの反応もあるが、「全員が良いと思うウィンドーに驚きは生まれない」と言い切る。顧客からの反応も上々で、ウィンドーに関する問い合わせも増えているそうだ。


15年の夏休みシーズンは、人気アーティストユニット「ハジメテン」に依頼。口の中で花火がはじける映像を流すなど、ワクワクドキドキを表現した


クリスマスのウインドーは期待度も高く気合いが入る。16年は100人の小さなサンタの物語を見せた。撮影スポットを設けて客に参加してもらう仕掛けも最近のトレンド

和光本館 来街者の記憶に残るように

 今年創業70周年を迎えた専門店の和光。ショーウィンドーの歴史も古く、「さかのぼれる範囲では1965年から記録がある」という。同社を代表するウィンドーは、東京・銀座4丁目交差点の和光本館だ。交差点に面した1階のウィンドーは、「銀座を訪れた全ての人々に感動をもたらす」を理念に、基本的に年間8回、45日ごとにディスプレーを変更している。

 ウィンドーを担当するのは、6人が在籍するデザイン企画部。武蔵淳部長がアートディレクターとして統括している。商品部が候補として挙げた商品の中から、展示する商品やその数、コーディネートなどを毎回のテーマに合わせて決めている。

 ウィンドーは、「何が良くて、何が悪いのか効果測定がしづらい」ため、「作り方に定石は無い」という。同店の場合、「縦2.4メートル、横8メートルの巨大なウィンドーに対して、あまり商品を置きすぎない」ように心掛けている。

 また、「陳列する商品の魅力を引き立てつつ、見たことが無くて楽しい、驚きのあるウィンドーを作る」ようにもしている。しかし、「それが一番難しい」とも。「銀座を訪れた記憶の片隅に、当社のウィンドーも残ってもらえれば」と願っている。

 ここ最近で反響が多かったのは、クリスマス用の展示。窓の外にボタンを設置し、押すと窓の中で寝そべっている巨大なシロクマの人形が、首を振ったり、まばたきしたりするようにした。

 首元には、ツリーのオルゴールやガラスのオブジェ、ティーカップ、ジュエリーなどを陳列、「プレゼントに気付かずに寝ているクリスマスの朝」を表現した。「ウィンドーの前に人だかりができたり、展示している商品をプレゼントに選んでもらえたりした」という。

昨年の1階のクリスマス用のウィンドー


一つのテーマの中でも、細かな変更は随時行う。写真はペンギンがプレゼントを届けている

プランタン(パリ・オスマン本店) パリっ子大のお気に入り

 パリっ子が避けて通れないプランタン、パリ・オスマン本店のショーウィンドー。そこにはいつも素敵な驚きが待っている。

 パリのクリスマスシーズンはオスマン通りの11のウィンドーから始まり、その集客力は何と1000万人。同店のアーティスティックディレクター、フランク・バンシェ氏は、ウィンドーの役割について「高級百貨店プランタンのイメージを伝えるメディア」と強調する。

 ウィンドーは年間7、8回、モードに沿ったテーマで姿を変える。一つのプロジェクトに、着想から完成まで約6カ月。イベントやキャンペーンのプログラムから、シーズン、トレンド、そして新ブランドを絡ませながら、時代の先駆者としてプランタンが打ち出すべきテーマを決める。

 次にカラーバリエーションを考えながらイメージボードに取りかかり、それに基づいてディスプレーを制作していく。クリスマスに関しては全セクションが一体となり、テーマの採択から完成まで丸1年を要する。

 ウィンドーは時に、賭けのような奇抜なメディアになることも。数えきれないほどのエピソードからバンシェ氏が、「非常に思い出深い」と回想するのは、「ウィンドーライブ」。

 カール・ラガーフェルド、ポール・スミス、イザベル・マランらのゲストデザイナーが、それぞれの世界観を表現したショーウィンドーから、外にいるジャーナリストたちのインタビューに答えるという前代未聞のライブを実現させた。ランジェリーフロアのリニューアルを記念し、あのナイトクラブ「クレージーホース」のダンサーがウィンドーでエレガントなヌードレヴューを披露したこともあった。

 「ルイ・ヴィトン」の草間彌生コレクションとの協業では、彌生人形を制作し、水玉づくしの強烈なディスプレーを展開。プレスで大々的に取り上げられ、予想以上の宣伝効果を上げた。パリをテーマにした「クリスチャン・ディオール」とのクリスマス協業ディスプレーは大評判になり、高額限定企画商品が販売初日から大ヒット。偉大な「ウィンドーパワー」が即数字で示された。

(パリ=松井孝予通信員)


ウィンドーでカール・ラガーフェルドの生インタビュー

創業150周年を祝うディスプレー

大丸松坂屋百貨店 ミニチュアドールに洋服を完コピ

 大丸松坂屋百貨店では3月、春らしい衣料を身にまとったミニチュアドールがウィンドーを飾った。取引先に自社の強みやこだわりを凝縮したミニチュアの服やライフスタイル関連商品を制作してもらい、それをドールに着せて展示するというもの。サイズは6分の1だが、素材や色柄は基本的に実際のアイテムを完全コピー。ミニチュアの人形が勢揃いしたウィンドーについ足を止めて見入ったり、「かわいい!」と写真を撮る通行客が多く見られた。

 物作りのこだわりや商品のストーリーを、かわいい人形を通じて客に伝える狙いで実施した。「マッキントッシュ・ロンドン」の鮮やかなピンクのゴム引きコート、「ロートレアモン」の福井で織ったオリジナル素材のトレンチコートなど、約100ブランドがミニチュアドールで自社商品を再現した。柄の見え方を実物と同じにするための裁断時に使用する布の位置や、制作途中の洋服を着せ付けてから仕上げるなど、ミニチュアのサイズならではの工夫が求められたという。

 ドールにはQRコードを付けて特設サイトに誘導したり、各ショップでも同じ商品をディスプレーして接客にも活用。同時にオリジナルウェブドラマ「1/6ドールの彼女」を制作してPRした。

ミニチュアドールが勢揃い(大丸神戸店)

かわいくて、つい足を止めてしまう(大丸東京店)



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