様々な職種で活躍する業界人に「クローゼットの中で一番多いアイテム」を聞きました。好きが高じて、あるいは職業柄なのか、特定のアイテムを集めてしまうことは多いようです。ご自身の〝コレクション〟との付き合い方やこだわりを教えていただきました。
日常彩るバッグとドレス
「ノリエノモト」デザイナー 榎本紀子さん
バッグブランド「ノリエノモト」のデザイナーで、レディスアパレルブランドのパタンナーも務めている。職業柄、クローゼットには自身の手掛けるバッグが多いが、ガーリーでデザイン性の高いドレスも100着ほど並んでいる。
その日着る服を決め、60個ほどある自身がデザインしたバッグの中から毎日違うものを選ぶ。バッグはボディーと持ち手の曲線が個性的だが「形やカラーバリエーションが豊富なため、どんなコーディネートでも似合うものが見つかる」という。そんな榎本さんのスタイリングや物作りの過程を発信しているインスタグラムには10万人以上のフォロワーがいる。
好きで集めているドレスは、チュールやスパンコール、リボン、たっぷりのギャザーなどの装飾的なデザインのものや、一見何のモチーフかわからない珍しい柄やエッジの効いたカッティングのものもある。ファッションショーに赴いたり、期間限定店で人前に立つ仕事の時だけでなく、日常で着ることも多い。海外出張も多いため、ナイロンやポリエステルなどの軽くてしわにならない素材のドレスも集めている。
パタンナーという職業柄、縫製の工夫や手作業に魅力を感じて服を買うことが多い。「仕上がりを軽くするためにこのような縫製にしているのかなと、作り手の思いが見えることがある。だから一度買うと捨てられないし、コレクションしている。今持っている服は30年後も着たいような服ばかり」と話す。
上質な生地が引き立つスーツ
国島社長 伊藤核太郎さん
紳士服地メーカーの社長なので、やはりスーツを着用する機会が多い。クローゼットにはスーツ30着、シャツ10枚、ネクタイ30本が並ぶほか、スーツに合わせるポケットチーフやネクタイピン、時計、靴なども多く所有している。
特にスーツは自社の生地を得意先のテーラーで仕立てるだけでなく、研究のために他社の生地で仕立てる機会も少なくないため「どうしても数が増えていく」のだという。
普段は、その季節に着ることの多いスーツをクローゼットの手前に、次の季節に着るスーツは奥に並べ、衣替えはしない。
その代わり、スーツの保管方法は基本に忠実だ。着用するたびにブラシでほこりを払い、ジャケットとパンツをセットにしてハンガーにかけ、風通しの良い場所に置く。
クリーニングはシーズンに1回程度で、クリーニングから返ってきたときは、溶剤の匂いや湿気を飛ばすため、必ずビニールから出してから仕舞うよう心掛けている。
凝った柄のスーツも5着ほど持っているが、ほとんどは無地のネイビーだ。ネクタイも無地が多い。
18世紀にイギリスのメンズスタイルの権威だったジョージ・ブライアン・ブランメルにならい、派手な色や柄の組み合わせにならず、上質な素材の良さが引き立つさりげないスーツの着こなしを毎日考えるようにしているという。
自然体な魅力はスウェットから
スタイリスト 梶雄太さん
数多くの雑誌、広告、映画などで活躍している人気スタイリストの梶雄太さん。気取っていないのに格好良い着こなしの提案が高く評価されている。
スウェットトップやパーカを50~60着を持っていて、毎日スウェットアイテムで過ごしている。
小学生の頃からジーンズ、スウェットトップ、ベースボールキャップの組み合わせが大好きだった。「スウェットトップの魅力はシーズン変化への対応のしやすさ、価格の買いやすさ、入手のしやすさだ」と話す。
「フルーツ・オブ・ザ・ルーム」「ギルダン」といった、ボディーブランドの無地のアイテムが好み。ビンテージ物などにはこだわらず、気に入った色やサイズ感の現行品や手頃な古着も購入している。
意識して集めていたわけではなく、気がついたら増えていたとのこと。服装に制約がない仕事なので、好きなものを着たいという思いで、毎日スウェットトップに袖を通す。自然体で魅力があるスタイリングの仕事にも生きているようだ。
自宅に服を収納するための衣装部屋を1室設けている。簡単に畳んで重ねて棚に置いているが、お店のようにきちんと並べたりはしない。「きれいに整理するよりも、その方が落ち着く」と話す。
梶さんの〝スウェットトップ愛〟に終わりはない。最近は、ジップアップのスウェットパーカを狙っている。
(繊研新聞本紙24年4月10日付)