【記者の目】衣料品活性化策で健闘するSC

2018/11/24 06:45 更新


 レディスを中心に衣料品の売り上げの低迷が続いている。SCの多くは食やコスメ、生活雑貨など衣料品以外の分野を拡大しているが、衣料品の活性化策を進め、健闘している施設も少なくない。その多くは取引先との連携を深め、エリアや館特性に合わせたMDや販促を軸にした需要喚起策に取り組み、成果を上げている。

(有井学=本社編集部SC担当)

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 ルミネは基幹店のルミネ新宿とルミネエストを中心に、今春夏も衣料品、全館売上高ともに順調に伸ばした。取引先に働きかけて新業態を積極導入するとともに、館独自の店装MDを取り入れたショップを拡大し、ファッションに関心が高い消費者の需要をつかんでいる。全社の重点施策として、曜日や時間帯別の客層、購買動向の変化に応じたVMD強化策を研修などを通じてこの1~2年で推進、その精度が向上したことも要因だ。取引先と一体となって、新たな施策を進めた成果も大きい。

発信力を強める

 ルミネエストは18年3月期の全館売上高が過去最高額を更新したが、ヤングレディスカジュアルの売り上げは厳しかった。多くのブランドで新しい商品提案ができなかったことに加え、「ファッション市場を先導するオピニオンリーダーに対する仕掛けが館として足りなかったのが大きな要因」(草薙恵美子ルミネ常務ルミネエスト店長)という。そのため、今期は「オピニオンリーダーに向けた発信力強化」を重点とし、高感度なショップを導入するとともに、シーズンMDを見直した。

 「トレンド性が高い」新商品の投入時期を早くし、同時に大型販促も実施して「オピニオンリーダー層の需要を喚起し、実売期のマス層の購買につなげる」施策をショップに徹底させている。8月はセール明けの3日から各ショップで限定品を含む秋物の先行販売を開始、SNSで多くのフォロワーを持つショップスタッフ約30人を各ショップのビジュアルモデルに起用した販促を実施した。この成果で、苦戦が続いていたヤングレディス主力の地下1階の同月の売り上げは前年比8%増、全館で6.6%増と大きく伸ばした。秋冬物の実需が本格化する今月はヤングレディス12ブランドと組んで、インスタグラムで配信した商品をルミネの通販サイトで購入できるライブコマースを初めて実施するなど新たな仕掛けも行う。

ルミネエストはヤングレディスでトレンド商品を早めに仕掛け、成果を上げている(9月初めの「マウジー」の店頭)

 ラフォーレ原宿も衣料品を中心に売り上げを伸ばしている。ここ数年の改装によって国内外のデザイナーブランドや、海外有力ブランドとの協業商品を数多く揃えるセレクトショップなどを拡大、海外を含む新進ブランドの期間限定店を積極導入するなど「ファッション感度が高い層に向けた発信力を強めてきた成果」(村田裕介館長)だ。多店舗展開する日本のヤングレディスブランドを含め、大半のショップで「原宿や館の特性に合わせたMDや情報発信」を強化していることも、個性を重視するファンの支持につながっている。全館の大型販促企画と連動して、館限定商品や先行販売商品も強化している。今春はディズニー/ピクサー映画の長編映画全作品を疑似体験できるイベントを1カ月間実施、約40店で各作品との協業商品を販売し、「多くを動員し、売り上げも好調」だった。

 六本木ヒルズは海外ラグジュアリーブランドや日本の大型セレクトショップの拡充を軸に、地元の港区在住者を主体とした高所得者への提案力を高め、自社カードの上顧客向けのサービスも強化、成果を上げている。海外ブランドを含め、ファッション店の多くが館特性に合わせたMDや店装を取り入れている。

情報を共有、一体となって

 いずれも、競合が激しい大都市中心部に立地するため、館独自の商品やMDによる差別化を重視している。テナントとの交渉力が高い有力施設であることが、その実現を可能にしている。ただし、こうした施策ができるディベロッパーは限られる。

 独自商品やMDを提案しなくても、需要を喚起することはできる。例えば、集客増が見込める大型販促に合わせ、ショップに個別の販促企画と売れ筋商品の在庫確保を促して成果を上げた施設も多い。ポイントカードでの購買データをもとに、複数のショップの協業販促を行い、買い回りと売り上げ増につながる事例も増えてきた。ディベロッパーとテナントが日常的なコミュニケーションを深め、館や顧客などの情報を共有し、一体となって戦略を立案・実行することが不可欠だ。

(繊研新聞本紙10月15日付)

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