テキスタイルコンバーターのササキセルム(愛知県一宮市)は、素材ブランド「HOVE」(ホーブ)の販売を始めた。尾州産地の技術継承をテーマとして取り組む初のオリジナル素材ブランド。
尾州産地は規模の縮小が続き、機屋や撚糸、糸染めなどの物作りが厳しくなっている。一方、同社はこうした分業体制に付加価値を高める技術があるとして、オリジナルブランドで産地の物作りを支えたい考え。
23~24年秋冬向けは「ラボ」をテーマに、カットジャカードや特殊な起毛など実験的な素材を揃えた。カットジャカードでは、経糸に48番双糸、緯糸に5番単糸という太番手の糸を組み合わせたウール100%の織物を開発。太番手のジャカード織りの部分を手作業でカットし、イレギュラーな感覚を表現した。ジャカード織りで綾目を崩して揺らぎを作る特殊なテキスタイルも開発。織物設計によって特殊な織柄を付与するテキスタイルメーカーと取り組んだ。
起毛では、経糸にウールとナイロン、緯糸にモヘヤの糸を配し、3者混のテキスタイルの緯糸をループ状にして起毛加工を施した。同一素材で起毛の深度によって長めと短めのシャギーを提案した。また、ハンドメイド感覚の「流し染め」を施し、ピンクやブルー、イエローグリーンの濃淡の色味が一品ごとに異なる偶発性も強調する。