【売り上げアップを目指すためには】田原屋 伊藤淳さん 商品部と現場が一体となって伝える

2025/09/17 05:29 更新


田原屋 靴/バッグ商品部グループリーダー 伊藤さん

 魅力的な商品を揃え、客に伝えていく店頭スタッフとの関係性は重要だ。店頭での効率化や連動・連携を密にした取り組みが大切になっていく。成功事例を広め、互いのコミュニケーションを深めて課題を解決するなどで、売り上げや購買客数を上げている。

 ファッション業界に絞って就活し、12年4月入社の伊藤淳さん。店舗マネジャーや店長と現場を経て、8年前に本部の商品部に移動。田原屋は「若い社員が多く活躍し、責任ある業務を任せられている」ことに、働きがいとモチベーションを高めている。23年から現在の靴/バッグ商品部のグループリーダーとして、商品部と現場が一体となって客に魅力的な提案ができるように取り組んでいる。「頼られる、力になれる存在」に向けて奮闘している。

コロナ禍乗り越え自信

 田原屋は総合職でも初めは現場配属からで、「現場の経験は今の知識や力になっている」という。商品部では、ミセスのボトムとスーツやブラックフォーマルなどの婦人外装の仕入れ担当を経て、今の靴・バッグに。「郷に入っては郷に従えではないが、日々の取引先との交渉など社内外で知識を積んでいった」。

 伊藤さんを大きく成長させたのが、コロナ禍を乗り越えた経験だった。人の動きが減り、「売り上げや利益は我慢の連続だった」という。取引先にも助けられ、「今は厳しいが、いつまでに商品を引き取ります」など、スケジュールや気持ちを伝えて双方が納得できる話し合いを重ねていった。取引先には会社の代表として、真摯(しんし)な対応で関係を深めて乗り切った。

 商品部の取り組みだけでは客に商品の魅力は伝わらない。そこで、店舗を輪店し、店長や商品スタッフの声を聞く。また、店舗には「どういう商品が入ります」「こんな売り場を作ってください」などを配信、スタッフがすぐに理解し動けるような体制を作っている。

 月1回の店長会議では、「この商品が少ないので、早く入れてください」などその場で言われることもあり、日頃のコミュニケーションで円滑な関係を築いている。現場の経験から、互いが納得できる指示や提案で、店舗運営が円滑になるように心掛けている。

新たなチャレンジ

 靴の担当になった当初、これまでと違う取り組みにチャレンジした伊藤さん。一つは売れ筋は定番化で機会ロスを無くす一方で、比較的に少なかったヤング向けの新商品や機能性を軸にした靴を揃え、バリエーションと新カテゴリー導入に着手し、潜在顧客や新規客へのアプローチを追求した。

若い層に向けて新たに導入していった靴がヒット商品に

 二つ目は、「このアイテムはこの価格でしか売れない」など、凝り固まった考えを払拭(ふっしょく)していった。原材料の高騰などで商品単価が上昇傾向の中をどう戦っていくかを考え、「価値に見合った価格での物作りがより重要」と、素材やデザイン、履き心地などにこだわった物作りを徹底し、客や現場から支持される商品の提案を強めていった。

 厚底のスニーカーやパンプスなど若い客層に向けた商品のほか、軽くて洗える、クッション性を高めた中敷き使用など機能軸の靴などがヒット商品になっていった。以前より価格帯の幅が広がり、アッパー商品でも売れ筋が出て「取り組みは間違っていなかった」。売り上げも徐々に増え、客層の広がりや売れ筋も増えていった。

信頼を得るように

 日々の業務では特に、「現場スタッフとお客様に迷惑をかけない」ことに気を付けている。不良品や商品画像と納品商品が少し違う、納品遅れなどあってはいけないため、物作りから商品が店頭に入れまでを細かくチェックし、客と店頭スタッフの信頼を落とさないことを徹底している。

 客や現場から「良い商品だね」「売り場が変わったね」などの声にやりがいを感じている。伊藤さんはトライ・アンド・エラーを繰り返しながら、客から支持される商品提案に妥協せず、「経験を積み、さらに成長していきたい」という。

(繊研新聞本紙25年9月17日付)

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