「サンローラン」は、故イヴ・サンローランの別荘があったマラケシュを舞台に23年春夏メンズコレクションを発表した。砂漠に作ったオアシスを囲む円形のステージに、サンローランらしいセクシーなメンズスタイルが登場する。
サンローランのアイコンともいえるタキシードは構築的なスクエアショルダー。四角く張り出したショルダーラインが力強さを生み出す。一方、カシュクールのブラウスやボウブラウスの透け感が、マスキュリンとフェミニンの境界で軽やかなエレガンスを主張する。風をはらんで揺れるフルイドラインとドレープが繊細さをアピールする。合わせるパンツはハイウエストのワイドパンツが中心。マラケシュらしいサンダルと合わせて、リラックスした雰囲気を取り入れる。
ギャザーのサテンコートは、ルーズで流れるように体を包み込む。ピンヒールのショートブーツからも、ジェンダーを越えた美しさを感じ取れる。アンソニー・ヴァカレロによるサンローランは、イヴ・サンローランの持っていたマスキュリンとフェミニンの境界のエレガンスをベースにしながらも、それを現代的な解釈で美しく描いている。
(小笠原拓郎)