サカイは4月22日、東京・南青山の旗艦店をリニューアルオープンした。同店は、11年にオープンしたサカイ唯一の旗艦店。敷地も面積も同じだが、壁や床を取り払って再構築し、サカイらしい発想の転換が感じられる店が完成した。
デザインを担当したのは、空間設計などを手掛ける関祐介。「破壊と再生」をテーマに掲げる建築デザイナーのクリエイティブと、阿部千登勢によるサカイの既成概念にとらわれない姿勢が融合した。以前のモダンなムードを残しながら、無機質な空間にセンスの良いユーモアが散りばめられた。
カギは、階段だ。一面ガラス張りのエントランスには、横長の階段を設置。2段上がってフロアに入るため、視点が少し高くなった。中央を区切っていた壁を取り払っているので、開放的なイメージに変身した。
奥のフロアも面白い。既存のコンクリートの床をくり抜いて、プール状のフロアを作った。白かった壁はコンクリート打ちっぱなし、くりぬいた空間の縁は壊しかけのような状態。無機質な空間に、ペルシャ絨毯(じゅうたん)を重ねた階段がコントラストを描いている。既存の空間を新しく見せる、関のシンボリックな手法「ニューフロア」の考え方が生きている。
2階はフラットで広々とした空間になった。そこに、さまざまなアクセントが散りばめられている。直線的なフロアに、イタリアの「マレンコ」の丸みのソファ。大きなガラス窓は外の新緑が借景となり、爽やかなムードが感じられる。横一直線の朱色の棚は、全体を引き締めている。天井半分に設置されたLEDのライトも目を引く。
商品は、コレクションルックを崩して、日常で楽しめるようなスタイリングを提案。レディス、メンズのウェアから雑貨までほぼ全て揃っており、トータルでスタイリングできる。
複雑で凝った造りの内装は、建築好きもうならせる。2階への階段は、既存のステップの上に新しい階段を重ねたもの。入り口部分は元の店のレンガの壁が見え隠れする。随所に店の歴史やストーリーが感じられる。
(青木規子)