ウールを中心とした意匠テキスタイルの産地、尾州。その中心地である愛知県一宮市に、産地からの発信拠点として16年4月にオープンしたのが「RE-TAIL」(リテイル)だ。
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1933年(昭和8年)に建てられた旧尾西繊維協会ビルを一棟、丸ごと借り上げ、そこに直営のテキスタイル売り場やイベントスペース、テナントが入居した複合的な機能を持つ施設に生まれ変わった。さらに、運営母体として尾州産地のテキスタイルメーカー有志が出資して株式会社リテイルを設立し、運営に当たっている珍しい存在だ。
そこに至るには、運営に参画している産地企業各社の活性化に向けた思いや、活性化のアイデアを持って提案したコーディネーターでその後リテイル取締役に就任したキオンステューディオ代表の稀温の存在、そしてビル解体のタイミングなど多くの偶然が重なった。いずれにしてもコロナ禍を経ても事業は堅調で、尾州産地を代表する発信拠点として機能している。
即売会の成功が契機
リテイルには「リテイル夜明け前」とも呼べる準備期間があった。愛知県一宮市出身で広告デザインや宣伝、イベントの仕掛けなどを行ってきた稀温が、2000年代に名古屋市内などで行ったテキスタイルマーケットが源流といえる。
その後、尾州産地のテキスタイルを集めた「アール・マテリアル・プロジェクト」を12年ごろから開催。そのイベントの主催を通じ、尾州産地の若手経営者との縁が生まれた。