楽天ファッション・ウィーク東京21年秋冬 未来を切り開く力強さと純粋な姿勢

2021/03/17 06:28 更新


 楽天ファッション・ウィーク東京21年秋冬は、明るい未来を切り開く力強さや日常生活の豊かさを感じさせるプレゼンテーションが相次いだ。コロナ禍をきっかけに、ファッションを通して出来ること、自分が本当にやりたいことを掘り下げたブランドが目立つ。誰もが共有できる身近さを持ったイメージも大事な要素になっている。

(須田渉美)

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初心に返って

 初日は、五つのフィジカル(リアル)ショーが行われた。

 ミキオサカベ(坂部三樹郎、シュエジェンファン)は、モノトーンのテーラードジャケットを軸に、キレのあるカッティングできりりとした女性らしさを表現した。冒頭に出てきたモデルが着用するのは、柔らかなオーバーショルダーに、腰上でカットしたショート丈のジャケットに細身のパンツ。前振りの袖のシルエットなど、坂部が強みとするクラシックなフォルムを崩さずに潔く見せた。肩にタックを入れてアシンメトリーなラインを出したドレスの下にもテーラードジャケット。首元を覆う襟のライン、シャープな袖のラインが浮き立って見える。「コロナ禍で世の中の価値観が変わる中、純粋性や初心に戻ることにが大事だと感じ、ジャケットが欠かせないと思った」と坂部。ボトムは出来るだけ量感を抑え、足元にはこの間、力を入れて商品開発している「グラウンズ」のスニーカーを合わせる。新たに加わったのは、オリジナルのパッド素材を使ったボディーバッグ。ドレスのドレープラインに沿って、パッドがコンテンポラリーな曲線を描く。

ミキオサカベ

 ケイスケヨシダ(吉田圭佑)は、ローファーを着用したスクールガールの装いに、ゆがんだフォルムを融合し、ずれたバランスのエレガンスを見せた。キーアイテムは、ネックラインが長細くひん曲がり、袖の大きさも異なったTシャツ。前見頃に描かれる鳥の羽根やクモの巣もゆがんでいる。その下に片側がずれ落ちたプリーツスカートを着用したり、2枚重ねのテーラードジャケットの上に重ね着したりと、ゆがんだシルエットを強調した。思春期の強さと不安定さが入り混じったたたずまいを表現した。「今の先の見えない状況が、さえなかった自分の学生時代に重なって見えた」と吉田。パープルの机と椅子を並べて教室を演出して「心に響く力強さで希望の持てるコレクションにしたいと思った」。

ケイスケヨシダ

 初のショーとなったニサイ(松田直己)は、古着のアップサイクルをボリューム変化の豊かな形で見せた。着古したデニムやミリタリーウェアを切り替えたブルゾンに、ペイントでパッチワークのように見せたデニムパンツ。細かくパッチワークしたニットで袖にボリュームを出したセーター。ニットのつなぎ目には、細いテープでステッチを入れるなど、一点物らしい表情を強調する。テーマは「アフターレインボー」。属性を問わない男女のモデルを使い、スニーカーにインクを付け、ランウェーにカラフルな足跡を残した。「カッコイイ人だけが着ているファッションではなく、いろんな価値観の人が着用できる服を目指している」と松田。ブランド価値を上げていくには、オリジナルのスタイルを確立させるクリエイションも必要だ。

ニサイ

画面を通してリアルに

 デジタル配信では、画面を通じても素材やディテールの特徴がリアルに伝わる見せ方へと磨きがかかった。

 ザ・リラクス(倉橋直実)はトラディショナルなウェアの本質に向き合い続けるなかで、ボトムラインに軽やかな動きを出してさっそうと見せた。モノトーンのトレンチコートは、着丈が若干短めで大きくサイドスリットが入り、裾が空気をはらんでひるがえる。気品があってエアリー、ミニマムとは異なる、シンプルな心地よいラインを描く。透明感のあるレース素材を使ったドレスをレイヤードしたり、定番のヨーク仕立てのドレスに花柄の生地を使ったりと、いつもより女性らしい一面が目を引く。ウィンドーペーンのコートの下には星柄のドレス。肩の力が抜けたバランスで今の気持ちに寄り添う。

ザ・リラクス

 リト(嶋川美也子)は、石の柱がそびえるダイナミックな建築を背景に、軽やかな布の動きを感じさせるレイヤードスタイルを見せた。テーマは「コントゥアーズ」(輪郭)。クラシックなダブルブレストのジャケットやメンズライクなロングコートを、しなやかな落ち感のある生地を生かし、レディーライクな輪郭に置き換える。ふんわり包み込む優しさを感じさせるのは、ストライプ状のキルティング素材を使ったアイテム。シャツジャケットやコートは柔らかみを帯びて、縦のラインがスマート。広幅のストールはポンチョ風に羽織れ、モダンなアクセントを添える。

リト

 初参加のセヴシグ(長野剛識)は、しっかりした作りのワードローブに遊び心を添えるグラフィック柄を、ポップアート風に編集したムービーを制作した。Tシャツやジャケットにプリントしたイラストやグラフィティー、パーカに刺繍した虎柄などが飛び出してくる。人体の骨をジャカートで表現したセーター、グラフィックの熊柄を刺繍したカウチンなど、デジタルの輪郭を愛らしく表現したアイテムが目を引いた。

セヴシグ

 カラーをテーマにしたタクタク(島瀬敬章)は、柔らかなトーンのブルー、ブラウン、グリーンをキーカラーにリラックスムードの重ね着を見せた。オールド、ユース、ボーイの3世代の男性モデルの日常生活を描いたショートムービー。背丈の低い少年は、大人のサイズのグリーンのシャツに袖なしのアウターを着用し、トレンチコートを羽織って外出する。無邪気なオーバーサイズの装いが、緩やかな気持ちを感じさせた。

タクタク

(フィジカルショーの写真=堀内智博、南部菜穂子)



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