【専門店】「20年販売結果と21年経営見通し」アンケート

2021/02/15 06:30 更新


 繊研新聞社は、中小ファッション専門店へ「20年販売結果と21年経営見通しアンケート」を行った。20年は新型コロナウイルス感染症の拡大により、「誰も経験したことがない事態」がおき、3月からの春夏物、落ち着くと見られていた秋冬物まで大きな影響を受けた。各店の品揃えや対象客、提案テイスト、価格帯、店舗展開立地が異なるため、売り上げ状況や施策などを単純比較はできないが、コロナ禍により「SNSでの販促アプローチ」「ECサイト開設・整備」などへの取り組みが目立ち、より「発信力・集客力」を重視する課題と位置付ける企業が増えている。アンケートでは「20年の販売、客数・客単価の増減」「コロナ禍で実施した販売施策」「21年の販売見通し」を質問した。

《20年販売結果》コロナ響き客数減は6割、現状見直す契機に

2割強が前年超える

 20年の販売結果では前年を上回った企業は26%で、下回った企業が63%を占めた。新型コロナ感染症による緊急事態宣言で、商業施設などにテナント出店する企業は約2カ月完全休業した店もあり、売り上げに大きく響いた。

 好調店の記述回答を見ると、「EC販売への人員シフトと強化で、店売りからECへ大きくシフトチェンジした」(イシカワラボ)、「国内需要(シニア層)に目を向けたアパレル関連企業が多くなり、タイアップができた」(えがお洋品店)、「服好きな顧客に向けた新規のブランド導入などで満足感を高めた」(クルール)など、新たな施策が売り上げに貢献している。

 売り上げが減少した企業でも、「仕入れを減らして売り上げは落ちたが、顧客の購入で消化率向上や出張などの経費減もあり、利益は伸びた」(セルティ)、「来店減に伴いお客様への対応が深まり、客単価アップで内容が良くなっている」(ステュードベーカーインターナショナル)など、利益がアップした企業が見られた。

客数減も客単価増

 客数・客単価の傾向での質問では、客数が「伸びた」と回答した企業は26%で、「落ちた」は61%。昨年と回答企業の入れ替わりもあるため単純比較はできないが、昨年は「伸びた」が5割強を占めていた。個店や路面店などは個性的な品揃えや信頼を寄せる人から購入したいなどで、顧客の比率が高い傾向から客数の安定が見られていた。しかし、コロナ禍の影響を受け、路面立地でも外出自粛などで客数の落ち込みが目立った。

 一方で、客単価は「伸びた」が58%で、「落ちた」はわずか13%だった。多かった理由が「来店客は減った分、密な接客ができた」や「顧客が多く、まとめ買いが見られた」、「この時期に来店されるお客様は購買意欲がある」などで、これまでの顧客との関係や信頼関係、品揃えの優位性などで店の強みが発揮されている。

《コロナ下の販売施策》新たな取り組みが成果、強まったデジタル活用

 コロナ下で実施した販売施策を複数選択してもらった結果では、来店できない顧客に対し、SNSやEC販売などオンライン、デジタル活用が目立った。

 以前からEC販売を行っていた企業もあるが、コロナ禍を機に取り組んだ企業も多く、デジタル活用の流れは強まっている。

 「動画配信により、店舗と顧客とのつながりを保つ試みが徐々に成果に」(スズキインターナショナル)、「取り扱いブランドデザイナーへの独自インタビューを行い、それを通じてファンとブランドをつなぐ取り組み」(ザ・フォーアイド)、「ECサイトの人員増・投資」(ロフトマン)など、結果につながっている。

 一方、「無駄なもの、現状ある資源の有効活用をする方法を考える時期に」(セドルクロージングストア)、「色々と見つめ直すきっかけになった」(ファボリニコ)など、大きな環境変化に対する方向性を模索、検討することで、今後につながる年になったようだ。


《今年の見通し》「発信力・集客力」が最重要課題

先行きの不透明感

 「21年の販売予想見通し」では、「伸びる」を選んだ企業が55%で、「悪化」予想は11%だった。昨年「伸びる」と回答した企業が43%だったことと比べると期待感がうかがえる。20年の新型コロナ感染症の影響で、落ち込んだ売り上げや消費意欲回復を見通している。苦しい中で、ネット販売や品揃えの見直しなどに活路を見いだした取り組みが一定の成果につながっていることも背景にあるようだ。また、ある程度ショップが淘汰(とうた)され、エリアでの生き残りで認知度が上がるとの見方もある。

 「横ばい」は34%だが、20年の売り上げ減少傾向を考えると、景気浮上はあまり考えられないとの雰囲気が感じられる。「悪化」も加えた記述回答を見ると、新型コロナの終息や五輪開催など先行きの不透明さが一番多く、20年の売り上げがスタンダードになるや、在庫を抑える傾向に売り上げアップは難しいなどの意見がある。

より独自の施策を

 「重要視する経営指標」を複数選択してもらった結果は、「発信力・集客力」が昨年に続き一番多く、「目利き力の磨き」も上位となった。ネット販売など購買動向の多様化がさらに進み、より商品力の重要性や顧客化が欠かせなくなっている。昨年より、「自店独自商品の開発」や「人材の教育・育成」への回答数が増えていることも、より個性やコーディネート力など店の魅力アップへの取り組みが重要と見ていることが分かる。また、「こんな時代だからこそ心躍る洋服を見せ続けたい」(ダイアリーズ)など、楽しい雰囲気や笑顔を提供する必要性を感じている。

 また、「コミュニティー作り」も大きく増えており、地域への貢献とともに顧客とのつながりを重視する傾向がうかがえる。昨年は「出店・販路の拡大」はほとんど選ばれなかったが、客数拡大や売り上げアップのため、「3年計画で4店の出店を見据えた取り組み」(ミサンガインターナショナル)、「新規出店に向けて、早期の人材確保。出店予定先でのコミュニティー作りを先行させる」(ツジ)など、ウィズコロナに向けた動きも出てきている。


《アンケート協力企業・ショップ》

Pt.アルフレッド、イシカワラボ、ヴェリスタ、えがお洋品店、エスティーカンパニー、クルール、ケーアンドピーインターナショナル、サークルアオモリ、ザ・ステージ、ザ・フォーアイド、ザボウ、スズキインターナショナル、ステュードベーカーインターナショナル、スパーク、セドルクロージングストア、セルティ、ダイアリーズ、千万喜、ツジ、テラス、ナインズ、ナーレンシフ、ミサンガインターナショナル、ピッカ、ヒノヤ、ファブフォー、ファボリニコ、フロンティア、ベシックス、ホルス、ユーフォニカ、ラージラブタウン、リストリクト、リゾラ・ディ・エム、リトルハピネス、ルーム、ローズ、ロフトマン(50音順)

(繊研新聞本紙21年1月7日付)

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