エトワール海渡早川社長 リアルとオンラインの融合で第4創業へ

2021/05/01 06:30 更新


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 会員制総合卸のエトワール海渡は2月から、「リアルとオンラインが融合する次なるワンストップ卸」に向けて、売り場の在庫をなくしたショールーム化に切り替えた。デジタルの活用は時流となるなかで、コロナ禍を背景に加速、小売店の利便性とニーズに対応した取り組みを強化している。創業は1902年で、この間も時代性などに対応し企業スタイルを変えてきている。オンラインを活用した第4創業に向けて、企業の魅力向上と存在感を発揮していく。

小売店に寄り添った企業創造

 ――長い歴史の中で企業を変えてきた。

 当社は小間物製造卸として創業し、第2創業の小間物現金卸に移行、1961年の第3創業からは東京・日本橋馬喰町に、現在の「ファッション館」や「リビング館」「ホームデコ館」などの卸店舗を集積し、ワンストップ型総合卸を構築してきました。時代性に対応し、お客様に寄り添って事業を創造してきた歴史があります。現在は大きく環境が変化しており、もう一度強みである幅広い品揃えと在庫の中からピックアップできるワンストップ型という定義を見つめ直しました。これからの時代を見据え、リアル店舗とオンラインの情報を一緒に提供する必要性が高まっていると感じ、第4創業に向けた具体的な取り組みを19年から始めています。

 オンラインの活用ではECによるBtoB(企業間取引)の仕入れサイト「エトネット」の拡充によるプラットフォームを構築し、昨年10月には新たに仕入れスキャンアプリを導入するなど徐々に機能を充実させています。コロナ禍を機にネット経由の発注はどんどん増えています。20年4月から21年1月の来店とネット経由の発注構成比は、ネットが前年同期間の40%から70%に高まり、一気に来店を逆転しました。会員企業もオンライン活用の背中を押されているような雰囲気です。

 小売店からは「すぐに持ち帰り、店頭に導入できる」ことができなくなるとの懸念もありました。しかし、最近の傾向では小売店の持ち帰り比率は全体の20%ほどになっていました。店舗を回り、在庫の中から必要な商品をピックアップし、まとめて商品を発送する小売店が多く見られたこともオンラインの活用強化を後押ししています。

 ――ショールーム化とは。

 これまでは店舗に在庫を積んでいましたが、各商品のサンプルを置くスタイルに切り替えました。在庫を置く必要がなくなり、昨年12月に卸店舗のリビング館とホームデコ館を完全閉鎖し、2月からファッション館に集約しました。

 1階から7階をショールームとし、1階がカジュアルライフスタイル雑貨、2階テーブルウェア、キッチン雑貨など、6階バッグなど服飾雑貨、7階レディスウェアなど、分かりやすいフロア構成にしています。サンプルと聞くと発注商品と違うものがあるとイメージされる方もいますが、現物の商品を置いており、来店される小売店はこれまで通りに見て、触って、確かめて、体感できる商品選びができます。

2月からショールーム化した「ファッション館」

 ――1館体制で社員の働き方も変わる。

 これまでは店舗に在庫を揃える必要があり、随時商品を補充していました。また、小売店が発注した商品をまとめて発送する作業もあり、手間と時間が取られていました。今後はこれらの作業の必要性がなくなり、時間の使い方や動き方が変わってきます。

 オンラインでの発注体制に向けた商品の撮影や掲載に時間が使えます。また、若手の社員はライブ配信やZoomを使った情報発信などに取り組んでいます。来店しない、できない小売店も増えてくるので、コミュニケーションを深める作業も欠かせなくなってきます。

 ショールームでは実際の店頭を意識したディスプレーやコーディネート提案にも力を入れています。消費者の購買動向やニーズも変わってきており、参考になるように努め、動画でも配信しています。店舗に在庫をなくしたことで、こうした新しい取り組みが実現しました。1階には撮影スタジオを新設し、小売店なども自由に使えます。今後は気軽にSNS用の商品撮影やライブコマースなどに活用できるように、さらに機能を充実させていきます。

さらに利便性とニーズ対応を

 ――オンラインの活用で小売店のメリットは。

 新たに導入した仕入れスキャンアプリは、商品に付いているバーコードをスキャンするだけで、在庫確認や発注・決済までの一連の業務が完了できます。これまで、店舗内を回って仕入れたい商品を持ち歩くことも不要で、仕入れ業務を手間なく効率的にできるようになっています。在庫は倉庫に一元化し、当日の12時までの発注で、当日の配送手続きができ、最短で翌日には店舗に商品が届く仕組みで、商品を持ち帰る手間もかかりません。これまで通り商品を持ち帰りたい小売店には、前日の15時までネット決済完了で、翌日にショールームで商品が受け取れます。

 現在、当日発注、当日の持ち帰りはできませんが、物流機能などの改善に取り組み、午前中に来店し夕方には商品を持ち帰れるなど、可能な限りリードタイムの短縮化を実現させるよう努めていきます。

 アプリには2月1日から「リクエスト機能」を付加しました。当社が取り扱っていない商品でも必要な商品を営業担当が探してつなげていき、小売店は商品を探す手間が省けます。また、卸店舗の場合は扱える商品がどうしても限られていましたが、ショールームとオンラインの融合で、幅広い商品が扱えるようになります。現在、衣食住の取り扱いは約70万SKU(在庫最小管理単位)ですが、将来的には無限の商品が選べる可能性があります。

 最近はヘルスケアやライフスタイル商品のニーズが高まっており、ファッション関連では家中需要が伸びています。消費者ニーズの多様化がより進み、衣食住を扱う当社ならではの商品提案ができます。例えば好調なマスクではインナーメーカーが作った肌触りがいいものや、食品や雑貨企業による特徴を生かしたマスクが揃えられ、小売店の顧客ニーズに応えることが可能です。リクエスト機能で、「これが欲しい」「あの商品は扱っているの」などの情報をいただき、さらに幅広い取扱商品を構築し、サービスを拡充していきます。

 ――仕入れや店舗運営も変わってくる。

 仕入れサイトのエトネットとともに、24時間いつでも商品が探せ、色や柄の在庫も確認でき、商品も確保できるようになっています。小売店はお客様のニーズによって一緒に商品を確認し、その場で発注もできる。店によっては最低限の在庫だけで、運営できることも可能。リードタイムはありますが、閉店後に売れた、不足している商品を発注することで、小売店の在庫軽減にもつながります。極端に言えば、当社を小売店のバックヤード替わりにも使え、小売店の仕入れリスクを軽減できる可能性があります。

 仕入れの簡素化で、エンドユーザーである消費者とのつながりをもっと増やすために時間が使えます。コロナ禍で大きく環境が変わり、より顧客とのつながりやコミュニケーションが重要となっている今、提供するデジタル化によって小売店の商いをさらにサポートできるように取り組んでいきます。 

 ――DX(デジタルトランスフォーメーション)化は。

 一つのサポート機能として取り組んでいます。一気にデジタルやDX化にかじを切るわけではありません。人との出会いや小売店と消費者をつなぐお手伝いの方法や手段の一つがDX化。根底にあるのは消費者が楽しんで欲しいとの思いです。

 デジタルを使うことで、今まで以上に小売店との接点を持ち、より「濃(こま)やか」な対応を心掛けていきます。リアルでのつながりがあるからできることで、リアルの部分は大切にしていきます。小売店とサプライヤーと一緒に、イノベーションを起こしていきたいと考えています。

 先行きは読めませんが、新型コロナの影響は来年くらいまで続きそうです。当社もそうですが、小売店も商習慣を変えることはなかなか難しいことだと思っています。スタートしたばかりですが、お互いに変わっていく必要がある時代だとも感じています。

はやかわ・きんのすけ 77年東京生まれ。多摩美術大学在学中に渡米し、グラフィックデザインを学ぶ。01年にデザイン事務所シナプスプラス代表、04年エトワール海渡に入社し取締役就任。経営企画部長、執行役員経営企画・CC部門担当を経て、08年に副社長、11年6月社長に就任。

■エトワール海渡

 1902年、貴金属小間物製造卸として現在の東京・柳橋に海渡商店を開業。41年には日本橋横山町に現金卸売り場を開設し、48年に海渡と改組する。時代の変化とともに企業運営も変化させ、60年には業界初の新制度となる取引先小売店会員登録制度を導入した。翌年には馬喰町問屋街最大の卸店舗本館(現ファッション館)をオープン、ワンストップ型総合卸店舗の構築を進めていく。79年にはエトワール海渡に商号を変更し、2006年から卸のECサイトを開設するなど、オンラインへの取り組みを始める。早川謹之助社長は7代目で、「時代が変わる中で、常に企業も変わっていかなければとのDNAを受け継いでいる」と、新たな企業構築に取り組んでいる。

《記者メモ》

 110年以上の歴史と実績がある老舗企業で見られる固定観念や前年実績重視の雰囲気が感じられない。企業の変化を恐れない風土が培われており、受け継がれている。特に長らく続いた卸店舗でのワンストップ型からの「リアルとオンラインの融合」路線は、しみついた商習慣からの変化が必要で、新たなチャレンジだ。変化にも「商いを創造し続ける」「なくてはならない存在であり続ける」「人とモノの出会いをサポートする」などのミッションを堅持し続け、人々の生活をより楽しく豊かにし、社会に貢献する企業であり続けるように注力する姿勢は変わらない。コロナ禍でファッション業界の環境も大きく変わり、小売店や消費者のニーズがさらに多様化しているが、変わらぬ姿勢で乗り越えていくことに期待したい。

(古川伸広)

(繊研新聞本紙21年3月3日付)

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