【パリ=小笠原拓郎、写真=大原広和】「サンローラン」の会場となったエッフェル塔を臨む広場に、噴水を囲むようにして四角い空間が作られている。この広場にはなかったはずの噴水まで作るなど、会場セッティングにこだわった。そこに登場するのは、サンローランらしいセクシーさと凜々(りり)しさの両面を持つスタイルだ。
ジャージーのマキシドレスと合わせるのは、レザーのコートやライダーズジャケット。ハードなアウターとの対比で女性らしさを強調する。コートの多くはスクエアショルダーの構築的なシルエット。80年代を思わせるショルダーラインが強さをアピールするが、ジャージーのドレスやセットアップは体のラインをさらけ出し、ときにベアバックなど素肌を見せるデザインになっている。黒、パープル、ブラウン、グリーン、マスタード。様々な色のジャージードレスとハードなアウターがコントラストを描く。
ジャージードレスは、身頃の布がそのままドレープとなりスカーフのように顔を覆う。そのドレープいっぱいのラインは、イヴ・サンローランの別荘もあったマラケシュのエキゾチックなムードをはらむ。ヘリンボーンツイードのトレンチコートからメルトンウールのコートまで、アウターはスクエアショルダーで貫かれ、80年代の強い女性像を思わせる。
布をねじってブラトップのようなディテールにしたジャージーのコンビネゾン、ペグトップパンツとタイトなトップのセットアップ。ドレスも含めて体のラインを強調したアイテムが充実する。シンプルなラインを描くタイトなアイテムを、大きなメタリックバングルといったアクセサリーが彩る。シンプルな中に、サンローランのエッセンスが散りばめられたコレクション。