23年春夏パリ・コレクション ミニや肌見せで軽快に

2022/10/07 06:28 更新


 【パリ=小笠原拓郎、青木規子】23年春夏パリ・コレクションは、軽快さが特徴だ。マスキュリンなテーラーリングもクラシカルなツイードスタイルも、ショートパンツやミニスカートと組み合わせて軽やかに仕上げている。カットワークやスラッシュといった肌見せディテールも軽さを表現する重要な要素になっている。

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 ルイ・ヴィトンのショー会場となったルーブル美術館の中庭へと入っていくと、赤いサーカス小屋のような建物が立っている。その周りに並べられた椅子に座って待っていると、赤い小屋の一部の幕が開いて、ショーが始まる。23年春夏は、服の細かなパーツに焦点を当て、そのパーツを拡大することで起こるバランスの変化を遊ぶ。出発点はルイ・ヴィトンのバッグについているネームタグ。このタグを拡大することで、バッグのように使うことから発想を広げた。洋服を形作るファスナーやボタンを拡大して服のバランスに違和感のあるアクセントを生み出す。

 チューブ状のパーツをアクセントにしたトップやミニスカートのフロントに、巨大なファスナーがついている。胸元にリボンを配したレザーパッチワークのドレスにも大きなファスナー。おそらく通常の10倍くらいのファスナーが、服のセンターでまるでアクセサリーのような光沢を放つ。キーリングに使うようなバックルは、そのまま巨大になってドレスのストラップとなる。

ルイ・ヴィトン

 レザーのパンツスーツやドレスには、大きなベルトとバックルがプリントされる。そして、コートの下に着たハイウエストのパンツの上から、まるでコルセットのように極太のバックルベルトを巻きつける。もちろんボタンも大きくなっている。コートやロングカーディガンには、巨大なスナップボタンがアクセサリーのように輝く。巨大なパーツと服とのアンバランスな違和感のコレクションだが、どこか「マルタン・マルジェラ」のかつてのコレクション「ドール」の大きなボタンのアイデアを思い出した。

ルイ・ヴィトン
ルイ・ヴィトン

 ジバンシィを手掛けるマシュー・M・ウィリアムズは、自身のルーツのアメリカとユベール・ド・ジバンシィが生きたフランスのスタイルを融合した。テーマは「異文化交流」。クラシカルなパリ・シックに着想したツイードジャケットに、ロサンゼルスのカジュアルに必要不可欠なカーゴパンツを合わせて、都会的に提案する。カーゴパンツもデニムパンツもハーフ丈にカット。洗いざらしのラフな感じと、クチュールメゾンならではの繊細なシフォンやサテンの滑らかな質感がコントラストを描く。クロップト丈のフーディーにMA-1を重ねたスタイルも、ヘルシーで今っぽい。

ジバンシィ

 ウジョーが見せたのは、シャツやテーラーリングを軸にしたレイヤードスタイル。マスキュリンなスタイルの重ね着は、デザイナーの西崎暢が得意とする手法。今シーズンはいつもより軽やかに仕上がった。ポイントになるのは上半身のコンパクトなバランス。ジャケットやシャツは短い丈の裾をシャーリングで絞り、ジャケットの上にはコルセット替わりのパーツを重ねる。縦長スタイルのウエストを強調して引き締めた。肌見せも軽さの理由。ウエストからちらりとのぞく肌、スカートの脇もカットアウトしている。手の甲を模したメタルのアクセサリーがユーモアをプラスする。

ウジョー

 アクリスは創業100周年記念で、リアルショーを再開。カシミヤやレースといった素材を重視したクリエイションの原点を改めて見つめながら、現代的な軽やかさを追求した。クリエイティブディレクターのアルベルト・クリームラーの父が78年に作ったカシミヤのダブルフェイスコートで始まり、マルチカラーのハートプリントのドレス、フランスのカレーのレースのセットアップなどが復活。エッセンシャルな服をスニーカーで軽やかに。

アクリス

 アン・ドゥムルメステールはフロアレングスのタンクドレスにオーバーシルエットのテーラードジャケット。全身黒のIラインシルエットは、まさにブランドの原点だ。創業デザイナーが確立した静かで強いスタイルを、改めて今の時代に置き換える作業が進んでいるようだ。変化しているのは、重すぎない点。透け感のあるジャージー使いが軽やかさにつながっている。左右の腰に位置するクロスボディーバッグが軽快なイメージ。

アン・ドゥムルメステール

(写真=ルイ・ヴィトンは大原広和)



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