【パリ=青木規子】23~24年秋冬パリ・コレクションの初日は、コンテストなどで注目される若手が揃った。いずれもトレンドとは一線を画する独自の世界がある。粗削りではあるものの、パワフルな表現にはファッションの自由や楽しさが感じさられる。
初日はドーバーストリートマーケット・パリショールームのある複合スペース3537でのショーが恒例になりつつある。コングロマリット企業が勢いを増し、若手がなかなか出にくくなっているパリ・コレクションにおいて若手の発信拠点なっている。
前シーズン、インパクトを残したヴァケラも3537で発表したブランドの一つ。今シーズンも勢いがある。特徴はフェティッシュ、ミリタリー、パンク、ビンテージといった強い要素が混ざり合うデザイン。フィッシュネットのボディースーツにハーネスを巻き付け、透けるトップにビンテージライクなブラを重ねる。ブルゾンやパンツには太いネジをスタッズのようにびっしり飾り、デニムパンツは細かく入れたスラッシュがボロボロになっている。デニムもレザーも経年変化したビンテージ風。極端に強い要素を重ねているので軽い服ではない。ただ絶妙なさじ加減で現代的な軽快さも感じる。強くクールなスタイルに仕上がった。
パリコレ4シーズン目のヴァインサントも3537で発表した。LVMHヤングファッションデザイナープライズ2022のセミファイナリストの一人で、デザインイメージは奇抜だ。ゴシック調のドレスや魔術師のようなテントコートなどダークなイメージを、極端なボリュームとカジュアルなデニムで進化させていく。マーブル模様のジャージードレスは同柄のコルセットでグラマラスなフォルムに成型する。カラーデニムのブルゾンとパンツのインナーにもコルセットを組み合わせる。ジャンポール・ゴルチエで2年間経験を積んだだけあって、そのエッセンスを受け継いでいる。
ニューカーマーのニッコロ・パスクアレッティは、21年デビューのイタリアブランド。ノスタルジックな手編みのニットアイテムとテーラードジャケット、チュニック、パンツをレイヤードして重みのある造形スタイルを作る。ドライなフリンジが揺れるチュニックドレスには手編みのロングマフラー、タートルネックセーターにはキャップスリーブのテーラードコート。シャツドレスに合わせたロングコートは無造作なタックが裾に動きを生んでいる。どこかフォークロリックなムードが漂う。
(写真=ヴァケラは大原広和)