パル(大阪市)は、LINEのBtoB(企業間取引)新規事業「LINEミニアプリ」を先行導入し、自社サイト「パルクローゼット」の3月の新規会員数は前月比40%伸ばした。実店舗でのQRコードの読み取りで会員化までの時間が1分以下になり、来店客のストレスをなくす支援ツールになっている。
(疋田優)
LINEミニアプリは、事業者向けとしてリリース予定のウェブアプリサービス。ポイントカードやクーポン発行、予約フォームの設置、決済、情報発信など、様々な機能がある。先行事例として、飲食やアパレルなど数社と組んでいる。
ライトユーザー狙う
パルは「自社ECの会員拡大化」を狙ってミニアプリを導入した。主な対象は、実店舗で購入した経験があるライトユーザー層。この層にLINE上のQRコードで承認を得て、EC会員とLINE公式アカウントの友だちに同時になってもらう狙いだ。ブランド情報などを定期的に発信でき、客はLINE上でECサイトの閲覧と購買が可能になる。
パルはすでにスマートフォン向けネイティブアプリを持つが、ダウンロード操作に不慣れな人にはアプリ導入が進まず、店舗スタッフが案内する場合も操作に時間がかかるため、客にも店員にもストレスがあった。LINE内の操作なら、新たにダウンロードすることなく、会員・ブランドショップの友だちとなって以降も、離脱率が低いと見て導入した。
ミニアプリは2月25日に導入し、雑貨業態「3コインズ」実店舗でも積極的に告知し、非接客型店舗でも新規会員の増加に貢献した。公式アカウントへも波及し、実店舗起点で公式アカウントの友だち数は1日当たり約3000人になった。新型コロナウイルス感染拡大による店舗休業までの約1カ月で、3コインズの友だち数は3倍になった。3月末でパルクローゼット会員数は300万人。
4~5月は店舗休業で会員拡大には至っていないが、2カ月間の自社EC売上高は前年同期比2倍以上となり、LINE経由売り上げも一定貢献している。今後は会員数500万人を目指す。「会員売り上げシェアアップで、顧客属性が分かる購買データを取得して事業精度に生かす」(堀田覚執行役員プロモーション推進部部長)考えだ。
使いやすさ高める
LINEにとってもミニアプリはBtoB向け新規事業として強化対象。月間アクティブユーザー8400万人に対し、スタンプなどでマーケティング対象客の獲得を促してきたが、店頭起点での友だち獲得にはあまり貢献できていなかった。事業会社が求める「ユーザーとの快適接点」「費用対効果」を高めるため、ミニアプリの浸透を目指す。
ミニアプリでの取得データは事業者側が保持できるようにし、アプリ機能も事業者の課題解決を優先していく構え。パルとはミニアプリ機能の使いやすさを高めるため、何度も打ち合わせしてUI・UX(ユーザーインターフェイス・エクスペリエンス)を設計したという。「LINEミニアプリは集客・会員化・来店予約・決済まで総合的に事業支援が可能。一つひとつシナリオを設計して事業者の要望に応えていきたい。LINE内で完結するのはユーザーにとってメリットが高い。アプリのダウンロードが進まない企業・ブランドには積極的に利用してもらいたい」(兼清俊太郎LINEB2B新規事業開発チーム)としている。