コロナ禍でデジタル市場が急速に広がるなか、東京ブランドでもオンラインストアの活用が目立ってきた。デザイン性に富んだ洋服は実店舗での接客や試着が欠かせないが、オンラインの買い物体験をクリエーションに結びつける動きも強まってきた。東京の14ブランドにアンケートでオンラインストアの現状を聞いた。
(須田渉美)
■家の中でも楽しめる
オンラインストアの強みは、誰でも遠方でも共有できるコミュニケーションにある。家の中でもクリエイションや買い物を楽しめるコンテンツでビジネスを広げている。
コレクション動画との連動に取り組んだのは「アンリアレイジ」。21年春夏のパリ・ファッションウィークがデジタル配信になったことを機に、視聴中に気になったモノをタップすると自社ECで購入できるインタラクティブ動画技術を導入。球体や三角すいなどの家に見立てた洋服を発表し、服には見えない不思議な造形で注目を集め、動画からECへの遷移率は55%だった。着用後のスタイリングを比較できるので、ユーザーの滞留時間も長い。「すぐにスタイルが分かる通常の販売とは逆にしたことが、結果として売り上げ増につながった」。発表当日には予約が殺到してサーバーダウン。新たに始めた協業のアクセサリー「アンエバー」など、即時に予約で完売した商品もある。
コレクション商品の販売に加え、ECでは限定商品も定期的に出し、20年のEC売り上げは前年比50%増となった。「全アイテム、Zoomでリモート接客を受けられる仕組みを構築し、着用が難しい商品も接客力でカバーできた」といい、リモート接客は週5回前後対応している。今後は、オフラインの実店舗からオンライン体験に誘導するサービスにも取り組んでいきたいという。