「ノンフラッグショールーム」始動 ソーシャルデザインでつながる合同展

2025/08/20 11:30 更新NEW!


 ソーシャルデザインでつながる合同展「ノンフラッグショールーム」がスタートし、7月末に東京・日本橋兜町で初開催した。ソーシャルデザインとは、デザインの力で社会問題を解決し、より良い暮らしを目指す取り組みのこと。それを主軸として活動するブランド「ザイノウエブラザーズ」をはじめ、同じ哲学を持つ国内外の5ブランドが集結し、26年春夏コレクションなど新作を披露した。

(青木規子)

哲学を共有する場へ

 同展の前身は、ザイノウエブラザーズがコロナ下にスタートした展示会。交友関係の広い同ブランドのデザイナー井上聡らが主体となって、同様の哲学を共有するブランドを自社の展示会で紹介してきた。回数を重ねるなかで、出展ブランドをフラットに紹介できる合同展にしようというアイデアが生まれ、今回からショールームを主体とする形となった。

 運営を担うのは、フリーランスの立場でザイノウエブラザーズのセールスを担当してきた酒田翼さん。国内外のブランドをボーダーレスな目線で厳選するセレクトショップ「ノンフラッグ」を神奈川・小田原で運営しており、そこから名前をとった。

 ノンフラッグとは、その名の通り「旗を持たない」の意味。旗や国など人々を分ける壁を越え、指針や哲学を大切にしたショールームにしたいという思いが形になった。それぞれのブランドがコミュニケーションを取り、共鳴し合える場を目指すという。

 今回はザイノウエブラザーズのほか、デンマークのコペンハーゲンを拠点とする「ピュアファブリケーションズ」、ガーナの手織り布でバッグを作る「ルティングス」などが揃った。

アップサイクル軸に

 ピュアファブリケーションズは、アップサイクルとカスタマイズを主軸とし、古いキッチンリネンなどを現代の洋服によみがえらせるブランド。今シーズンは、同じ考え方を共有する日本のライフスタイルブランド「パブリッククラフツ」との協業アイテムが目を引く。

「ピュアファブリケーションズ」×「パブリッククラフツ」

 パブリッククラフツは、失われつつある日本の素材に焦点を当て、現代の生活の中によみがえらせる活動をしている。今回は、廃棄された古い着物を裂いて織り上げるパブリッククラフツの裂き織りを元に、ピュアファブリケーションズがドレスやブルゾンにした。着物地を使うと和の雰囲気が強くなりがちだが、無地の着物を使うことでモダンな洋服に仕上がっている。コペンハーゲンで開催された「3デイズオブデザイン」でも発表した。

 日本のファッションブランド「クオン」も「デザインを通して社会課題を解決する」ことをブランド哲学に掲げている。「大量生産・大量消費経済からの脱却」「カッコいいとソーシャルグッドの両立」などを目指している。ブランド名は「久遠」に由来する。手掛けるのは、使い古した布やぼろきれを刺し子やつぎはぎで仕上げた服。古い布をアップリケしたTシャツもある。

「クオン」

 ザイノウエブラザーズは、東日本大震災で被害を受けた工場とともにTシャツのコレクション「東北プロジェクト」を継続している。同じ考えを持った友人らとの協業で、グラフィックをのせたTシャツを、今回は4人・ブランドとともに製作した。

ザイノウエブラザーズの「東北プロジェクト」

 同ショールームはメンズが中心だが、今後はウィメンズも強化する方針。今回はインドでの一貫生産にこだわる日本のアクセサリーブランド「ITCHOLA」(イッチョウラ)の商品を揃えた。インドの技術や天然資源を日本で紹介し、その産業を盛り上げることを目的とする。

 取引先のセレクトショップからは、ソーシャルデザインでつながるブランド同士の協業を求める声も多い。今後は様々な形で発信されそうだ。

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