24年後半、ファッション業界は「夏の猛暑」「長引く残暑」「短い秋」の影響を大きく受けた。秋物の立ち上がりが遅れ、防寒アウターの販売が伸び悩んだ。メーカー・小売り各社ともMDの見直しを迫られた。
最高気温を更新
気象庁によると、24年夏(6~8月)の日本国内の平均気温が平年より1.76度高く、23年夏と並び過去最高となった。さらに秋(9~11月)の平均気温も平年より1.97度高く、統計開始以降で最高だった昨年(プラス1.39度)を大きく上回り過去最高だった。つまり、24年の夏と秋は連続で過去最高の暑さが続いたことになる。
こうした状況から、従来のシーズン区分の見直しや商品企画を大幅に見直す企業が増えた。繊研新聞社が6、7月に実施した「全国専門店調査」(79社が回答)では、回答企業の8割が「気候変化に合わせてMDを見直した(見直す予定)」と答えた。MD見直しを24年春夏物以降とした回答は、36社に上った。
あふれるシアー素材
レディス専門店は、秋物が立ち上がる8月、残暑を見越し、秋色・夏素材のアイテムを充実。透け感のある薄いシアー素材が多用された。「アダム・エ・ロペ」アトレ恵比寿店は、カーキのチュールのベストとTシャツのセット品(税込み1万3200円)が好評を得た。「ローズバッド」新宿店では、チュールのラップスカート(1万1990円)をパンツにレイヤードして提案した。
スポーツ用品業界でも、夏場に涼しく着られるアイテムが増えた。「ゼロハリバートン」(エース)のゴルフラインは、トレンドのモックネックのトップをハーフジップ仕様にしたところ、売れ筋となった。
25年も「長く・暑い夏」への対応が必須となる。タキヒヨーは主力ゴルフブランド「ゾーイ」の25年春夏物で、6月以降の盛夏品を強化する。普段使い可能なロゴ付きの雑貨で、強い日差しから肌を隠したり、体に直接当てて冷やしたりできるアイテムを増やす。
大手専門店のアルペンは「アパレルは完全に転換期に入った。今後は四季ではなく、夏が二つある〝五季〟を前提に、MDを組み直す」(西條友英ゴルフ商品部長)という。
(繊研新聞本紙24年12月12日付)