【ニュース2020④】強まるアウトドア志向 業界に恩恵、異業種参入促す

2020/12/30 06:29 更新


新規参入者が増えたキャンプ(コールマン)

 新型コロナウイルス感染拡大を契機に、消費者のアウトドア志向が強まった。外出自粛の反動も相まって、他人との接触を抑えて楽しめるレジャーとして、キャンプなどのアクティビティーが注目された。「おうちキャンプ」「べランピング」など、自宅でキャンプ感覚を楽しむモチベーションも生まれた。

【関連記事】【ニュース2020③】オンラインのショー、展示会 デジタルに習熟、見せ方多様化

予想以上の回復

 スノーピークは4、5月に直営店や卸売先の店舗が休業した影響で売り上げを大きく落としたが、6月以降需要が拡大。第3四半期(7~9月)の国内売上高は前年同期比21.8%増加し、1~9月の国内売上高でも前年実績を上回る水準まで回復した。

 新たにキャンプを始める人が増えたことで、初心者が設営しやすく割安なエントリーモデルのテントが売れている。同社は8月に公表した通期(20年12月期)の業績予想を上方修正。売上高は162億2000万円(前期比13.5%増)、営業利益は2月に公表した期初予想の10億円をも上回る13億3000万円(43.9%増)を見込む。

 アウトドア専門店も同様の傾向だ。全国に「ワイルドワン」を21店展開するカンセキは、営業再開後に店頭販売が急速に回復。キャンプだけでなくフィッシングやアウトドアウェアなども伸び、想定以上の業績回復が続く。上期(4~9月)の営業収益は、59億6100万円(11%増)だった。

 アウトドア志向の強まりはウェアにも波及した。矢野経済研究所によると、アウトドアウェアの国内市場(出荷金額)は新型コロナの影響でマイナス成長となるが、人気ブランドへの関心が依然高いうえ、キャンプに出かける消費者の需要に支えられたことで、トレーニングウェアなど他のカテゴリーに比べ落ち込み幅が抑えられているという。その結果、20年はアウトドアウェアがカテゴリー別で最大の出荷規模となる見込みだ。

ブームに懸念の声も

 こうした傾向から、大型専門店の開設や異業種参入の動きも目立つ。ホームセンター主力のコーナン商事は9月、大阪府堺市に新業態のキャンプ専門店「キャンプデポ鳳東町店」(660平方メートル)を開業。メガスポーツは11月、横浜市にある「スポーツオーソリティ港北センター南店」(約3300平方メートル)をアウトドア特化の新業態「アウトドアステージ」としてリニューアルした。良品計画は、日常生活でも使えるキャンプ用品を揃える編集売り場「ムジ・キャンプ・ツールズ」を開発。7月に新潟の「無印良品直江津」店内に初導入した。

 一方、業界からは過熱を懸念する声が上がる。コールマンジャパンの中里豊社長は「90年代の第1次キャンプブームではメーカーは作りっぱなし、小売店は売りっぱなし、キャンパーはやりっぱなしですぐにブームは去った」と警鐘を鳴らす。21年はアウトドアがブームで終わるか、文化として定着するか、分岐点となる。

新規参入者が増えたキャンプ(コールマン)

(繊研新聞本紙20年12月22日付)



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事