【店長に聞く】新人教育どうしてますか?㊤

2019/05/05 06:28 更新


 春になり、多くの企業で新入社員が店舗に配属される時期がやってきた。人材獲得が難しくなっているなか、自店に配属された新人を育成し、定着させ、戦力化する重要性が増している。

 今回は4人の店長から、新人教育のコツについて聞いた。ほとんどの店長がまず性格を知ることに重きを置いているようだ。今の新人には、やる気を出させる働きかけも欠かせない。

シップスアトレ川崎店店長 上田理恵さん

仕事の意味伝え、成功積ませて自信を

 上田さんが心掛けているのは「なぜこの仕事をお願いするのか、なぜやらなければいけないのか」を伝えることだ。理由と意味を伝えることで、自発的に行動できる人材に育って欲しいからだ。「成功体験がモチベーションを上げ、自発的な行動につながる」との考えから、「どんな仕事がやりたいか聞き、ひとまず任せてみる」ようにもしている。

 16年春にオープンした店で店長を務めるようになった。同時に、大卒の新入社員も配属となった。新人に対して最初に行うのは、「1時間程度の面談」。上田さんと〝コーチングスタッフ〟と呼ばれる同じ店舗の社員、新人の3人で話し合う。面談では、「性格や生い立ち、長所の把握」に努めている。店舗の基本業務はコーチングスタッフが教えるため、上田さんは新人の特性を見極めて、「一歩進んだ指導を意識している」。

社員と密に連携を取り、新人は「何がどこまでできるようになっているか」を常に把握するという上田さん(右)

 例えば3年前の新人は、「接客が得意そうだったため、顧客を作るための指導」を重点的に行った。逆に現在の店で指導した時は「自信が無さそうな新人だったので、長所を褒めつつ、接客の機会を増やすようにした」。

 最近の新人は、「受け身の子が多いと感じている」。半面、「何でもそつなくこなせる印象」も持つ。仕事の意味を見いだしてあげたり、仕事を任せて成功体験を積ませると「自ら積極的に動いてくれるようになる」という。

 「ファッション業界を志す人材が昔と比べて変わってきた」とも感じている。売り手市場で、ファッション以外の興味・関心が増えているなか、「服に対する熱量に差を感じることがある」ようだ。とはいえ、「それが良い悪いということではない」と、差を受け入れつつ「服が好きになってもらうためには」を常に意識しながら新人に接している。

フリークスストアルミネ大宮店店長 星野友紀さん

性格の把握と密な交流で信頼築く

 16年から店長を務める星野さんは、新人の性格を細かく把握・分析し、それに応じて臨機応変に指導方法を変えている。どんな性格であっても共通して心掛けているのは「こまめなコミュニケーション」だ。メッセージアプリや店の営業時間前後のミーティング時など接する頻度を増やすことで、信頼関係を築いている。

 配属されて最初に行う面談では、家族構成や経験してきた仕事、入社理由などを聞き、最適な接し方を見極める。星野さんによると新人は「自発的に行動できるタイプ」と「承認欲求が強いタイプ」の大きく二つに分類できるという。前者は細かな目標設定と進捗管理、後者は頻繁に話を聞いて共感し、感謝を伝えるように心掛けている。

 手がかかるのは承認欲求が強いタイプだが、自ら行動できるタイプであっても「放置してはいけない」。1日、1週間、1カ月など人によって頻度を変えながら面談を行い、毎月の成果や課題、次に向けての目標を立てている。「自ら動けても、やりたい仕事や目標は日ごとに変化していく」ため、こまめに接して変化を感じ、新たな目標を設定してあげる必要がある。

「本音で意見を言い合うためにも、まずは信頼関係の構築が大事」という星野さん(左)

 昨年春に入社し、大宮店に配属された積極的なタイプの新人は、月ごとの目標設定や具体策の助言などを繰り返した結果、同社では最も早いスピードでリーダーに昇格したという。

 新人とのコミュニケーションは、店舗で会話をするだけでなく、LINEも活用する。その際は、「長文は送らない」「失敗に対する指導はせず、楽しい話をする」などを心掛ける。とはいえ「性格に応じて変えている」とも。積極的に仕事の話をしたい相手には「とことん付き合ってあげる」という。この面倒見の良さが星野さんの長所でもある。

(繊研新聞19年3月25日付)



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事