12回にわたって連載中の、架空の百貨店インショップ「ルクリア」の店長、麻紀の成長の物語。副店長の美穂、先輩でスーパーバイザーの瞳、百貨店フロアマネジャーの大谷さんが登場します。
前回、購入を後押してくれるようなPOPの書き方を学び、それが売り上げにつながると確信した麻紀。今日は新たな悩ましい問題にぶつかります。セール期間中、VP(ヴィジュアルプレゼンテーション☆文末に解説あり)で見せるのはやっぱりプロパー品?それとも__。
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来月から夏のセールが始まる。
本社の瞳から店長の麻紀に電話があった。
「セールの開始日が館によって分散しているのが定着したけど、昨年うちは思ったほど売れなかったから、今年は何か対策を練らないとね。たしか、麻紀の店ではセール中も、VPにプロパー品を着せていたのよね? 今年はセール品を着せたらどうかと思うんだけど…百貨店側の意向もあると思うから、マネジャーと相談してみてくれない?」
「わかりました。聞いてみますね」
瞳の言う通り、昨年は百貨店からの指示で、VPにはプロパー品を着せていた。
大谷マネジャーにセール品を着せたいと相談すると、返答はこうだった。
「本来、VPの目的は、立ち寄り率を上げること、飾った商品を売ること、そして新しい情報を伝えることなどだ。そのためにはできるだけ新鮮な商品を飾った方が良い。そう考えると、着せるべき商品はプロパーになるだろう」
麻紀は反論した。
「セールでも、色を統一したりしてきれいに見せることができたら、立ち寄り率は上がるのではないでしょうか? それから、売りたい商品を飾って見せるというディスプレーの原則もあります。セール品を売りたいのですから、飾っても良いと思うんです」
大谷マネジャーはうなずきながら答えた。
「君の言い分もよく分かるよ。つまり、売りたい商品を飾って、売り切ることを優先したい。言い方は悪いが、目先の売り上げを優先しているとも言えるかな。しかし、私は新しい情報発信を優先したいと考えている。百貨店全体のイメージアップと、次のシーズンのプロパーの売り上げを重視するというのが、意図するところだ」
話し合いはしばらく平行線だったが、やっと結論が出た。
「よし、こうしよう。方法としては二つある。一つは徹底してプロパーを着せる。周りにセール品があるところでは、トルソーを撤去する。もう一つは、メーンのVPにはセール品を着せて、周りがプロパー品のVPとPP(☆文末に解説あり)にはプロパーを着せる。この二つのどちらが良い結果をもたらすか、試してみよう」
こうして今年の夏のセールでは、麻紀の意見を取り入れ後者を試す、次の冬のセールでは徹底してプロパー品を飾るということで、麻紀も納得した。
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コトバ解説 ≫≫≫ VPとPP
VP:ヴィジュアルプレゼンテーションの略
外観、店舗デザインなどで店の存在を主張し注目してもらう工夫のこと
PP:ポイント・オブ・セールスプレゼンテーションの略
棚上や壁上、柱周りなどVP以外のディスプレーで店内のどこに何があるのかを示すこと
※この物語はフィクションです。実際のショップ、人物とは一切関係ありません。
(繊研新聞2014/6/2付の販売・リテイリスト支援のぺージに掲載されたものを元に編集しています)