私は社長就任時から「会社は動物園」と常々言ってきました。個性のあるバラバラな社員が〝お客様に喜んでもらう〟という目的を一緒にすることで、お客様に思いが届くのではと。金太郎飴(あめ)のような組織でなく、いろんな顔が出てくる面白い個性派集団が企業目的達成のために一致団結する。そんな組織を作りたいという理想がありました。
我が社は石川県の能登という田舎にあります。地域としてのコミュニティーの結びつきが強い一方で、同じでない人は変わった人、オカシナ人とみなされ、出る杭は打たれがちな面もありました。
そんな中、祖母の納骨で京都の東本願寺を訪問した際、蓮如上人500回御遠忌のテーマである「バラバラでいっしょ」が表記されているのを目にしました。私はこの言葉にすごくインパクトを受けたのです。
この「バラバラでいっしょ」という言葉の隣には「差異(ちがい)を認める世界の発見」と書かれていました。「バラバラがいっしょ」でなく、「バラバラをいっしょ」でもなく、「バラバラでいっしょ」は、人はみな個性を持ちみな違っていることを認め合うことが大切だと伝えてくれました。多様性を持った社員たちが「社長、それは違うのでは?」と意見できる。そのくらいの風土を持つ、理想の組織にしようと改めて決意しました。
祖母がくれた御縁の「バラバラでいっしょ」を心に刻み、謙虚に生きていきたいと思っています。
(マルオリグループ会長)
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「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。