米国のデザイナーブランド「トム・ブラウン」との取り組みは10年間続いています。毎シーズン、ニューヨークのアトリエに技術者を数人派遣し、コレクションのサンプルを縫製しています。今年の7月には、トム・ブラウン初のパリのオートクチュール挑戦でも現地に4人の技術者を派遣しました。
こうした取り組みができたのは、まじめに縫製業を営んできた結果だと思っています。それまで社内では気づかなかった、ミリ単位までこだわる縫製の正確さなどが長年の取り組みの中で信頼されてきたからです。評価したり、感動したりするポイントは世界共通だと実感できました。ただし、まじめさだけでなく「高いレベルで世界と戦おう」という気概も不可欠でしょう。
海外進出には意識改革も必要です。これまでの縫製工場は、単調な流れ作業で効率を上げて利益を出すことが良しとされてきましたが、これからの先進国の縫製業では従来型は通じません。デザイナーの高いレベルの要求に応えるためには、現場も自分の頭で考えて提案し、議論することが求められます。こうした作業を通じて技術者も鍛えられ、やりがいも増していくのです。
日本の縫製工場が欧米の有力ブランドから選ばれるようになれれば、未来も見えてくるでしょう。そのためにも自社の得意分野を磨き上げるとともに、途中であきらめずに挑戦し続ける強い気持ちが重要です。
(ファッションしらいし社長)
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「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。