前職から数えて20年以上、数年前までテキスタイルの営業をしていました。知識ゼロで業界に入ったのですが、アパレルデザイナーさんに生地を見せて商談するところから始まりました。慣れてくると、お客さんが忙しい人たちだと気付き、時間効率良く工夫するようになりました。
商談を重ねるごとにセレクト傾向を知り、選ばれそうにない見本は省き、適した生地を産地で探して提案に加える。展示会や店頭でそのブランドの服を見ると、素材開発のアイデアが湧きました。提案の精度が上がってくるとお客さんも手間が省け、機嫌良く話をしてくれるようになります。探し物があったり、他社生地で欠品が出たりすると最初に連絡をくれるように。薦めた素材の服が店頭でよく売れれば、さらに頼りにしてくれました。
ただ、商売が増えればトラブルにも遭います。「周囲の信頼を失わないように」と解決するまでは必死ですが、そういう時にこそ知識や経験が大きく積み上がっていきます。キャリアをつんで、自分の商いのボリュームが増えれば、会社の仲間や仕入れ先の人たちも喜んでくれました。今振り返ってみても、やりがいのある仕事だったと思います。
現在、弊社にもそうしたテキスタイル営業に取り組む社員がいます。彼らと取引先との商談の様子を見ると、改めて周囲への感謝の思いとともに、当時のことを懐かしく思い出します。
(川越政社長)
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「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。