《私のビジネス日記帳》卸売業をやめたわけ 野口麻衣子

2023/04/26 06:25 更新


 実家を継げと言われたわけではないのですが、大学時代はアルバイトをしつつ、授業とは別で会計や簿記を学んでいました。いつか役に立つかもしれないから損はないかな、という気持ちです。卒業後はアパレルに就職。そこは1年で辞め、98年に父の経営する今の会社に入りました。

 その頃は十数人の小さな所帯で、父も日々の業務に追われる毎日。社内に身内が一人でも居れば安心だったのでしょう。会社は卸売業でしたから相手のいる商売。常に売り先の経営が気になります。取引先が破綻して共倒れする同業の姿も目の当たりにしていましたから、いつかは自ら作って自ら売る会社にしたいと思っていました。

 2、3年ほど考えて01年にようやく「アプワイザー・リッシェ」が出来、池袋に1号店を開きました。自分たちで商品を並べ、店頭に立って一点ずつ丁寧に売りました。居抜き状態の店舗ではありましたが、自分たちのブランドを自らの屋号の店舗で売れることになったのは大きかった。

 商品に合う銀座や横浜にいつか店を出したいと思っていました。その頃、銀座ではなかったのですが、近隣の日比谷シャンテから声が掛かりオープン、店で忙しくしていました。そんな時、百貨店のバイヤーから出店依頼の電話が。実績もないブランドですから社内調整も大変だったでしょうが何とか通り、念願だった銀座にある松屋に店を開くことが出来ました。当時は雑誌『JJ』『CanCam』が人気。05年にエビちゃんブームでブランド人気に火がつきました。

(アルページュ社長)

「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。

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