《私のビジネス日記帳》米国に憧れて 下地毅

2022/07/20 06:25 更新


 64年生まれの私が思春期を過ごした沖縄・宮古島は本当に何もない所でした。雑誌は1カ月遅れですし、映画になると1年遅れはざら。テレビはNHKしか放送されていませんでした。年に2回「ウルトラマン」のような子供が好きな番組をまとめて市民会館で見ることができたのですが、どれも途中まで。次回はなぜか別のシーンから始まっているから、最後まで見たことはありませんでした。

 裁縫をしていた母親の影響もあったのか、中学生の頃にファッションに興味を持ちました。創刊したばっかりの雑誌『ポパイ』はバイブルで、穴が空くほど見ていました。米軍の払い下げジーンズなどは身近にありましたが、それ以外は雑誌の中だけ。文化的に飢え、都会の生活に渇望していた10代でした。

 高校の部活は強い競技を選びました。頑張れば島外に遠征に行けるからです。部活は空手。結構強く、3年とも全国大会に出場しました。が、残念なことに私の代の全国大会は全て九州で、東京や大阪には行けませんでした。それでも、バイトでためたお金で雑誌に載っているようなメンズショップに行っては買い物を楽しんでいました。

 ポパイを通じてアメリカ製品や生活を知り、憧れは強まるばかり。沖縄とアメリカの関係は今でも複雑ではありますが、若かった自分にとっては、かっこいいファッションや素敵なライフスタイルへの興味が勝っていたのです。いつかアメリカの地を踏みたいと思っていた私は18歳で島を出て、大都会・東京の学校に進みました。

(TSIホールディングス社長)

「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。

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