独系スーパーを侮るな!(若月美奈)

2014/09/02 14:26 更新


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独系スーパーを侮るな!

暦も9月になり、気分も気候もすっかり秋な英国。今年の夏を振り返ると、野菜や冷凍食品を売るように服を売る、ドイツ系スーパーの激安服のニュースに終始したように思う。

バーゲンセールが一段落し、秋物にはまだ早い夏休みのショーウインドウや新聞の広告欄を飾るのは学生服だ。「Back to School」の文字とともに小学生から高校生までの制服が並ぶ。

直訳すれば「学校に戻ろう」というこのキャッチフレーズは、「さあ、新学期の準備をしよう」といった意味合い。英国は9月から新年度がはじまるので、新学期というよりも、もっと大きな変わり目である。新入生はもちろん、成長期の子供達のために親は夏休みに制服を新調する。

その制服商戦で話題をさらったのが、ドイツ系スーパーのアルディだった。夏休みがはじまったばかりの7月24日、なんと、「全身4ポンド」という小学生の制服を発売したのだ。

小学生も制服を着て登校する英国では、多くの公立校が標準服を採用しており、白や水色のシャツやポロシャツ、プリーツスカートやジャンパースカート、パンツ、赤やブルーのセーターやカーディガンが基本アイテム。

アルディの制服はポロシャツ2枚入り(£1.25)、セーター(£1.25)、スカートかパンツ(£1.50)で計4ポンド。日本円にして700円也!

4歳から11歳児用が揃い、大きなサイズになると高くなる常識を覆し、すべてこの値段で買える。子供服は生活必需品と見なされ付加価値税(VAT、20%)がかからないのでもともと割安だが、それにしても安い。他のスーパーの半額、百貨店の4〜5分の1程度である。


  
アルディのサイトに紹介された小学生の制服(左)と8月28日に発売された大学生向けのスポーツカジュアルウエア

 

そして制服商戦が一段落した8月後半、秋物の立ち上がりでニュースとなったのが同じくドイツ系スーパーのリドルだ。

8月25日、「Rock your edgy look」をテーマに、レザー(もちろん合皮だが)やツイードのバイカージャケット(£14.99)、ストレッチデニム(£6.99)など9アイテムのレディスウエアを発売した。これまでもTシャツやトレーナーなどは販売しているが、“ファッション商品“への本格参入というのがニュースとなった。

8月末といえば、例年はまだ残暑で半袖にサンダル姿なのだが、今年は10日を過ぎると突然秋になった。36〜7度あった最高気温は20度前後に急落。絶好のスタートとなった。


  
リドルのサイトから。8月25日に発売されたレディスウエア(左)と28日発売の大学生向けのジャージウエア


ライバルであるこの2チェーンは基本的には食料品スーパーで激安がウリ。英国内に店舗をがんがん増やし、4大スーパー(テスコ、アズダ、セインズべりー、モリソン)の市場占有率を脅かす存在として注目されるようになって10年近くたつ。

ところが私は、実際にアルディの制服もリドルのバイカージャケットも自分の目で見ていない。

これらの商品は、いわゆる「本日の特売品」として売られており、店内のポスターやウェブサイト、新聞広告で告知をし、催し物売り場にどーんと投入して売り切れ御免。アルディの制服は1週間ぐらい店頭にあったようだが、10日後に立ち寄った時には、その場所にはバーベキュー用品が並んでいた。

リドルのバイカージャケットも、5日後の店頭ではお目にかかれなかった。ともに週2、3回ペースで特売品の告知販売を行っているが、その商品はウエブサイトからも1週間、早い時には3日で消えてしまう。8月28日にはアルディ、リドルともに大学生をターゲットに、カレッジ風のパーカやトレパンを売り出したが、アルディは3日後には跡形もなくなっていた。リドルは5日後の時点でXLサイズだけが多少残っていた。

だったら早く売り場を見に行けばいい、とお叱りをうけそうだが、これがなかなかすぐに行けない場所、というか日頃の行動範囲からはずれた地域にあるので難しい。

中心街にはなく、近いところといえば、低所得者やエスニック層、アイルランドなどからの移民の集まる地域にある。それなりの格好(適当なセーターにジーンズ、ずだ袋)で気合いを入れてと赴かなければならない。ネット情報では、アルディはアメリカでは、低カロリー商品などを揃えて中産階級の顧客を増やしているらしいが、ロンドンではまだまだ中産階級の人々は足を踏み入れない。


  
郊外の幹線道路沿いにあるリドル。アルディ同等に大きなべーカリーコーナーがあり、焼きたての美味しそうなパンが並んでいる

 
段ボールのパッケージのまま店頭に並ぶ食料品の間に、衣料品や日用雑貨の特売コーナーがある


さて、今回「Back to School」を見に久しぶりに足を運んだのは、ロンドン北西部のキルバーンというエリア。 スポーツ・ダイレクトやTKマックスといった衣料品のディスカウンターやアウトレットチェーン、日本の100円ショップにあたる1ポンドショップの並びにアルディがある。

そしてその並びには、あのプリマークもある。2007年春、オックスフォードストリートに旗艦店を出したと同時に、突然、本当に突然、お洒落な若者が集まるトレンディーなディスカウンターとして世界中から注目されるようになったプリマークだが、このキルバーン店は昔から地元住人の強い身方だった。

少なくとも15年前にはすでにこの場所にあったその店を見渡すと、トレンディな商品も少し増えたようだが、店内の様子は嬉しくなるほど変っていなかった。子供を5人引き連れた黒人のお母さんや、頭から全身を黒い布で覆ったアラブ女性の2人組みといった常連客、店のあちらこちらに散乱する商品・・・。

その様子を見ていると、アルディやリドルだっていつ化けるかわかならい、という気持ちになってくる。少なくとも、食料品分野ではかなりイケてきたアルディの外塀には、2014年英国食料品販売業アワードの大賞のマークが輝いている。

 


キルバーンハイストリートのアルディ

 
オックスフォードストリートの旗艦店と比べてかなり小さい。地元客をターゲットに子供服が多い印象

 

英国の衣料品価格はファストファッションやディスカウンターの台頭、スーパーマーケットの衣料品参入により、20年近く下落し続けていた。ところが2010年を底に上昇傾向となっている。中国の工賃の値上げなどがその要因とされているが、この夏の動きを見ていると、再び次の波が訪れそうだ。

ちなみに、アルディの制服、リドルのTシャツや子供服はバングラディシュ製。うーん、なんとも複雑な心境である。



あっと気がつけば、ロンドン在住が人生の半分を超してしまった。もっとも、まだ知らなかった昔ながらの英国、突如登場した新しい英国との出会いに、驚きや共感、失望を繰り返す日々は20ウン年前の来英時と変らない。そんな新米気分の発見をランダムに紹介します。繊研新聞ロンドン通信員

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