MDが使う「算数」をショップ運営に役立てよう!《第3講》㉜(佐藤正臣)

2024/01/10 06:00 更新


(第3項)ショップの在庫は足りないの?多いの?

8.在庫回転率(日数)と在庫消化日数②

≫≫佐藤正臣の過去のレポートはこちらから


前回の講義で在庫回転率を学びました。Tさん、在庫回転率の計算式を覚えていますか?



はい。在庫回転率の計算式は、

“在庫回転率=(期間)売上÷(期間)平均在庫”です。



Tさん、ありがとうございます。では、実際にTさんに在庫回転率の計算をしていただきましょう。架空のショップAの年間の実績をお伝えしますので、在庫回転率を計算してみてください。



了解しました!



ショップAの年間実績は以下の通りです。

【ショップAの1年間の実績】

  • 売上8000万円
  • 粗利率52%
  • 平均在庫原価800万円

このショップAの年間在庫回転率はどのようになりますか?



→売上8,000万円×(1-52%)=3840万円

となり、ショップAの1年での売上原価は3840万円です。

年間の平均在庫原価が800万円と記載されていますから、ショップAの在庫回転率は

→3840万円(売上原価)÷800万円(平均在庫原価)=4.8 

となります。



Tさん、正解です!ブラボーです!



(久しぶりのブラボーでた(笑))



在庫回転率は計算できたのですが、4.8といわれてもなんかピンとこないですね。



Tさんのおっしゃる通りかもしれません。年間で在庫回転率が4.8というのは、1年間で平均在庫原価の800万円の商品が、約5回お金に変わった!と言われてもピンときませんよね。ではTさん、1年365日という数字を、在庫回転率4.8で割ってみてください。



365日÷4.8≒76となりました。



ありがとうございます。Tさんに計算していただいた76は、在庫回転日数と言います。ショップAの平均在庫原価800万円の商品がお金に変わるのに、76日かかりますよ!ということになりますね。



なるほどです。私にはこちらの方がわかりやすいです。



補足ですが、これを在庫回転週数にしたければ、52で在庫回転率の数字を割り、在庫回転月数にしたければ、12で在庫回転率の数字を割る!ということですね。



流石Dさん、その通りです。これは皆さんが理解しやすい在庫回転の表示のされ方を選ばれると良いと存じます。



承知いたしました!



では、ここで少し話を変えます。私はMDアドバイザーとして、様々な業種の小売企業と仕事をしてきたのですが、個人的な所感として、やはりアパレル小売業が最も在庫コントロールが難しいと感じています。



せんせ、その理由を教えていただきたいです。



アパレル小売業に限らず在庫が増加しやすい要因は、商品そのものが売れないことなのですが、その他にも要因があります。

以下、アパレル小売業において在庫に影響を与えやすい要因をお伝えします。

①ミニマムロット:商品を作る・仕入をする際に最低限必要な数量のこと。→これがあることで必要以上の仕入を強いられる場合がある(※オリジナル商品等に多い)

②色・サイズ(SKU)展開数の多さ:メンズのスーツ関連や靴等は、サイズ展開を増やさないと商品の購入に至らない場合が多い。→必然的に在庫が増加しやすい

③セールを絶対にしない:セールをすることは在庫消化の一番手っ取り早い手段。その手段を放棄するということは、在庫が増えやすい。

④販売期間の設定:販売期間が短いと在庫が増えにくいという側面がある。→一気に長い期間分の商品発注をする必要がない(初回発注が少なく済む)

⑤LEAD TIME(リードタイム):LEAD TIMEが長い組織は、在庫が増えやすい。

他にも要因はありますが、主な要因は先述した通りです。



なるほどです。



せんせ、リードタイムの意味がわかりません!



LEAD TIME(リードタイム)は、商品を発注・注文してから店頭に商品が入荷するまでの期間と考えていただければと思います。



そのLEAD TIMEがどうして在庫に影響を与えるのですか?



Tさん、よい質問です。

例えば、販売期間3か月の商品Aと商品Bがあり、商品AのLEAD TIME(以下LT)は2週間。商品BのLTが2か月とします。

単純計算をすれば、商品Aは2週間で売れる分の初回発注をして、その後は売れ方とLTを鑑みなら追加発注をすれば、そんなに在庫を積む必要がありません。

しかし商品Bは、初回発注で最低でも2か月で売れる分の商品を発注しなければなりません。(商品の)売りはじめから多くの在庫を積まなければなりませんし、仮に商品が売れなかった場合、商品Aは追加発注を止めれば、そんなに在庫は残りませんが、商品Bは当初予測売上2か月分相当の商品を発注していますから、多くの在庫が残ることになってしまいます。

現状、アパレル小売業の商品の多くは、海外生産ですから、LTが長いのが現状です。このことが在庫コントロールを難しくする大きな要因となっていますね。


 


とても勉強になります!



ありがとうございます。ということで、今回の講義はこれにて終了です。次回は、在庫消化日数ついて学んでいければと存じます。



では、皆さん。次回もお楽しみに(@^^)/~~~

≫≫佐藤正臣の過去のレポートはこちらから

佐藤正臣 95年(株)ノーリーズにアルバイトとして物流倉庫からスタートし、店頭勤務7年(レディース)。02年より(株)ノーリーズにおいてメンズ(フレディ&グロスター・ノーリーズメンズ)立上をMDとして担当。10年よりフリーランスとして活動開始。シャツメーカーの新ブランド開発の企画サポート。その他、新規ブランドの立上マーチャンダイジング計画など、様々なフィールドで活躍したのち、14年5月末、株式会社エムズ商品計画を設立。小売り企業へのMDアドバイスや専門学校での講義・また海外での講義等。現在、多方面で活躍中。www.msmd.jp



この記事に関連する記事