21大都市に見る人口減少と高齢化(小松崎雅晴)

2017/03/08 13:07 更新


2015年国勢調査からは、全国 1719 市町村のうち、1416 市町村(82.4%)で人口が減少し、5%以上減少した市町村は828(48.2%)、同10%以上減少(再掲)も227(13.2%)あるとされ(いずれも平成22年比)、地方の崩壊が危惧されている。

政府は、地方の主要都市を人口流出の堤防として位置づけており、その中心にあるのが全国に20ある政令指定都市である。しかし、これまで説明してきたように、現在の人口規模が大きいからと言って必ずしも将来の人口減少幅が少ないとは言い切れない。

今回は政令指定都市に東京特別区(23区)を加えた21大都市について、人口減少・高齢化の状況を整理してみる。地方の過疎化とは別に都市部は都市部としての構造的問題を抱えている。 

1. 政令指定都市に東京特別区(23区)を加えた21大都市の状況

政令指定都市は、地方自治法で定められた地方公共団体の種類の一つで、人口50万人以上とされている。実際には静岡市、岡山市、相模原市のように70万人規模から横浜市の370万人まで、その規模は様々であり、横浜市の370万人は特殊としても、多くの政令指定都市が「県」という単位とほぼ同等以上の人口規模である。

これらの都市は県庁所在地であることも多く、それぞれの県や地方の中核という位置づけから産業、経済、文化などへの影響も大きい。ある意味、政令指定都市の活気、活力はその地域を象徴しているとも考えられ、その状況はいろいろな意味で重要となる。

 (1) 年齢4区分の人口変化

 

 
図表1

 

図表1は、21大都市について、5年刻みで2010年から2040年までの推計人口(男女別年齢別)の推移を整理したものである。年齢は年少人口0-14歳、生産年齢人口15-64歳、65歳以上、75歳以上(再掲)の4区分とし、2010年を100として、5年ごとの推計人口を指数化している。

いろいろな整理の仕方があるが、ここでは2025年の総人口指数の大きい順に並べてみた。

東京23区、川崎市、福岡市などについては、すでに指摘しているように推計値と実数との差が非常に大きく広がっているため、実際には推計値よりかなり人口指数が高くなっていると思われるが、全体としては一つの傾向を見出すことができると考えている。

全体の状況を見やすくするため、総人口指数、および年齢4区分人口指数のそれぞれについて、一定の値でくくり、太線で囲って色分けしてみた。

総人口指数は、右上から左下に向かって階段を下るような形になっている。数値の間隔が5年刻みであるから、階段のようなズレ一つが5年の差であり、同じ都市の総人口指数が5減少するのにほぼ10~15年の期間を要していることが分かる。

他の都市と比較すると、21大都市の中でも、同じ人口指数になるのに5年、10年、15年、20年と差があることが分かる。

 

 

 

このことは、人口減少が遅れる都市にとっては、先行して人口が減る都市を見ることで、何年か後の自都市の姿をイメージすることができ、課題も想定できるということになる。

年齢別に指数変化を見ると、傾向は多少違っている。

年少人口指数は総人口指数と同じように右上から左下に向かっているが、都市間の違いはそれほど大きくはない。生産年齢人口指数も同様の傾向にある。

明確な違いが読み取れるのは、65歳以上の老年人口指数である。総人口指数とは逆に左上から右下に向かっており、人口減少幅の少ない都市で増え方が大きく、人口減少幅が大きな都市で老年人口の増え方が少なくなっている。75歳以上では、65歳以上ほど極端ではないが、やはり人口減少幅の少ない都市で増え方が大きい。

総人口指数の低下の少ない都市は、急激に老年人口が増え、短期間で他の都市と同様の年齢構成に向かう。

それぞれの都市について、地域的な違い、産業構造など様々な違いはあるが、人口・年齢構成という点では他の先行する都市の状況を参考にすることは有効である。

(2) 年齢4区分の人口構成比 

 

 
図表2

 

図表2は、図表1と同様に年齢4区分について、総人口に対する人口構成比推移を整理したものである。ここでは、65歳以上の老年人口比率が小さい順に各都市を並び替えている

65歳以上老年人口比率を見ると、図表1の総人口指数同様に右上から左下に向かって変化しおり、75歳以上人口比率、生産年齢比率も同様な傾向にある。年少人口比率だけが他の年齢区分と異なる変化を示している。

同じ人口構成比になる時期が都市によって10年から15年、場合によっては20年の違いがあるのは人口指数と同様である。

例えば、年少人口では、2010年時点で大阪市、京都市、札幌市が11%台にあるが、他の多くの市では11%台になるのが2020年、ないし2025年である。早くに11%台にあった市は、その後10%を割り込んでいるが、2010年時点で比較的高い値を示していた市では2040年でも10%を割り込むことはない。

同様に生産年齢人口でも、北九州市は2015年時点で58%を割り込んでいるが、新潟市、浜松市、静岡市などが58%を割り込むのは2025年とそれよりも10年遅く、熊本市、広島市、横浜市、相模原市などでは、さらに10年遅い2035年である。

また、65歳以上でも、早くに30%台に乗せた北九州市・新潟市・静岡市と京都市・浜松市・千葉市・神戸市・札幌市では5年の差があるし、福岡市・さいたま市・堺市・名古屋市・広島市・仙台市・大阪市・大阪市・相模原市などとは、15年の差がある。75歳以上の人口構成比が20%台に乗せるのも早い市と遅い市では10~15年の差がある。

図表2の下段に年齢4区分の人口構成比について、最大値と最小値、およびレンジ(最大値と最小値の差)を記載した。レンジの変化を見ていくと、年少人口はほぼ一定範囲内に収まっているが、生産年齢人口と65歳以上人口は2020年、2025年をピークにその後縮小、75歳以上人口は2030年にかけて増加し、その後ほぼ一定で推移する。

65歳以上人口の構成比が減少していることを考えれば、75歳以上の人口構成比も2040年以降減少していくと考えられ、全体としてはこれまで大きく動いていた年齢構成変化がある程度収束していくと思われる。



 



上の表は、人口ピラミッドを比較したものである。

年齢4区分より、男女別、5歳階級別というように、さらに詳細に各都市の状況を見ることができる。

最も年少人口、生産年齢人口の人口減少率が少なく(総人口は2010年100に対し、2025年105.4、2040年103.5と唯一増えるとされる市である)、高齢者比率も低い川崎市と総人口の減少率、高齢者比率とも高い静岡市、新潟市、北九州市などの人口ピラミッドを比較すると、3市の2010年時点の人口ピラミッドは、まるで川崎市の2025年(15年後)と同じような形になっている。

ポイントは団塊の世代と団塊ジュニアの年代の関係である。

日本全体は団塊の世代から団塊ジュニアに向けて下に線を下ろすと真っ直ぐであり、この2世代がほぼ同数である。同様にすると川崎市では団塊ジュニアの方が大きいピラミッド型、他の3市は団塊の世代(2025年には団塊ジュニアがこの位置にくる)の方が大きい逆ピラミッドである。

ただし、2040年にはほぼすべての市が似たような形(年齢構成が近づく)に収束するから、この30年間が年齢構成的には一つの過渡期という見方ができる。

地方創生では人口流出のダムの役割を担うとされるこれら政令指定都市も、現状、その多くが「ただ人口が多い」というだけで必ずしも都市型の特性を持っているわけではない。大きな地方型都市といった方がよい市が多いため、年少人口の減少から深刻な生産年齢人口(働き手)不足が懸念される。

現在、人口が多く、産業集積が大きければ、その影響は周辺都市にまで及ぶと考えられるから深刻である。



 


上の表は、2025年と2035年の21大都市の特性を見るために、総人口指数(2010年=100)と65歳以上老年人口比率によって作成した散布図である。

総人口指数と65歳以上老年人口比率それぞれの値の高・中・低により9つのブロックに分けてみると、2025年、2035年とも21大都市はそのうちの6つのブロックに入るが、10年の間にポジションの変わる都市が現れる。

ほぼ中央に位置する都市は同じだが、千葉市、札幌市、北九州市、新潟市は総人口指数の低下によって下のポジションに移行する。逆に相対的な総人口指数の低下によって、川崎市、福岡市は上に上がったように見える。熊本市が左上に移行したように見えるのも総人口指数、老年人口比率の変化が少ないためである。

前述のように2015年の実数からは東京23区、川崎市、福岡市は総人口指数がもっと上に位置すると考えられるが、各都市の基本的なポジションは大きく変わらないと考えてもよいだろう。

全体的な状況を見ると、東京23区、大阪市、名古屋市を中心に、その周辺にあるさいたま市、横浜市などのベッドタウン、および東北の仙台市、九州の福岡市、中国の広島市、岡山市など地方の中核的な都市は総人口指数、老年人口比率ともに中間的なポジションにある。

それらとは特性の違う都市、あるいは開発・再開発など特殊要因で人口変動のあった都市がその周辺にあるといったところだろう。

横浜市と川崎市、大阪市と神戸市・堺市、福岡市と北九州市など地理的に近い都市であってもポジションが違うのは、その都市の特性、産業や昼夜人口比率、転入出などの状況の違いが影響している。

都市の舵取りの仕方次第で今後のまだポジションを変える可能性があるということだろう。

これらの数値と人口ピラミッドの形を基にして、様々な都市の状況を見ていけば、将来、どのような状況になるかという予測や方向づけのヒントを得ることはできる。

一つハッキリしているのは、静岡市や浜松市のように東京と名古屋の中間に位置する都市の舵取りの難しさであり、同様なことは大都市周辺の都市に共通する問題であると考えられる。

これらの都市は、企業、人口、教育など多くの点で3大都市に吸引される傾向にある。都市としての独自性、周辺地域からの吸引力が劣れば、地域における存在が脅かされる。

 

 

 

現在の状況を見る限り、都市の産業を含め、その性格、地勢における位置づけが変わらない限り、高齢化し、人口が減少していく都市は、そのままの方向で進み、転入によって人が集まる都市は、そのままの方向で移行する傾向にあると考えられる。

重要なことは自社が基盤とする都市の特性、将来リスクを知った上で、どのような意思決定するかである。

第3者的立場でその都市の変化に身を委ねる、他の都市を含めて比較的良い状況の都市を選択して移転する、自社の事業転換を含めて立地する都市のポジション修正、活性化に影響を与えるようなポジションをとる、…等々、選択肢は限られている。




こまつざき・まさはる エム・ビィ・アイ社長 芝浦工業大学工学部情報工学科非常勤講師。76年芝浦工業大学工業経営学科卒、76年イトーヨーカ堂入社。82年産業能率大学入職(経営開発研究本部・主幹研究員)、97年退職、現在にいたる



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