人口減少・超高齢時代のマーケット(小松崎雅晴)

2016/12/12 11:34 更新


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- 10年後 人口減少・超高齢時代のマーケットにどう対応するのか -

 ◆急激な人口減少と高齢化を正しく認識する!

今後10年間、全国的な人口減少とともに都市部を中心とした急激な高齢化が進む。人口は東京23区中心に一部の限られた地域に集中し、他の地域では減少する。

団塊の世代を中心とした60~69歳の人口は1800万人、総人口の14.2% (平成27年国勢調査)が70歳を超えることで日本全体の年齢構成は大幅に変わる。マーケットの構造も劇的に変わると考えるべきである。

政府は首都直下型地震、東南海地震に対して様々な情報発信しているが、十分な準備ができている自治体、企業は少ない。同様に、人口問題についても認識、準備は遅れている。

人口問題は当事者が特定しにくく、想定される事態も分かりにくい。これまで中長期人口推計による警告がどれだけ発せられても、具体的な準備、対処をすることなく時間だけが過ぎてきた。

国立社会保障・人口問題研究所が発行する「人口問題研究 第1巻、第2号1940年(ホームページより閲覧可能)」には、昭和100(2025)年までの人口推計がある。その中には、「我国の人口は昭和75(2000)年に1億2274万人でピークを迎え、その後高齢化しながら減少する」という推計結果がある。

70年以上も前にかなりの精度で人口推計がなされていたことは称賛に値するが、その時点では、それがそのまま現在のような危機的状況の予測になるとは誰も思っていなかったのだろう。

  

 

人口問題については、近年にも強烈な警告が発せられている。

①「仮に,1996 (平成8年) 年」における女性の年齢別出生率(合計特殊出生率1.43),出生性比(女性100に対して男性105.2)および死亡率(平均寿命 男;77.01歳,女;83.59歳)がずっと続いた場合の状況を,敢えて計算してみると、

 日本の人口は2100年ころには約4900万人,2500年ころには約30万人,3000年ころには約500人,3500年ころには約1人

 という計算になる。」(平成10年版厚生白書少子社会を考える17頁)

当時の担当大臣が小泉純一郎氏であることから、強烈なメッセージということもできるが、マスコミに大きく取り上げられることはなかった。

②平成24年1月30日、国立社会保障・人口問題研究所が「我が国の人口は2060年には8,674万人になり、老年人口は3,464万人、人口構成比39.9%となる」(「日本の将来人口推計 平成24年1月推計」)と発表した。

何よりも、これまで黒子に徹していた国立社会保障・人口問題研究所の責任者がテレビカメラの前に立ち、取材記者の質問に答える様子が全国に流れたことは異例である。

③平成26年5月8日、民間の有識者会議である日本創成会議が全国で896(全体の49.8%)の市区町村が人口減少による消滅の可能性がある「消滅可能性都市」であると発表し、テレビ、新聞などでもかなりの衝撃を持って報道された。その後、政府が「地方創生」に力を入れているが、「まちおこし」と「人口問題」は基本的に違うことが明らかになる結果となっている。



1. データから見る人口問題の概要

(1) 人口減少と人口集中の実態

我国の人口は2008~10年の12800万人をピークに減少している。人口は放物線を描くように減少幅を拡大し、2018年に50万人、2024年に70万人を超え、2041年からは毎年一つの県に相当する100万人超が減少するとされる。

平成27年国勢調査によれば、平成27年10月1日現在の人口は1億2711万人(平成22年比▲94.7万人)、国勢調査としては大正9年調査開始以来、初めて減少した。

39道府県で人口が減少する一方、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)は50. 8万人増、うち東京都35.4万人(特別区32.7万人)増である。東京圏以外で140万人超が減少した計算になる。

全国 1、719 市町村のうち、1、416 市町村(82.4%)で人口が減少し、5%以上減少した市町村は828(48.2%)、同10%以上減少(再掲)も227(13.2%)ある(いずれも平成22年比)。

国勢調査が行われた平成27年だけを見ると、「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(平成28年1月1日現在)では、40道府県で人口が減少し、東京圏の人口は1年間で16.8万人増、5年間に換算すると84万人増と一層加速している。2020年東京オリンピックへ向け、さらに人口集中(=他地域の人口減少)が加速することは確実だろう。

東京圏中心に1棟300~500戸、中には800~1000戸という大規模超高層マンション開発が集中する。その他、新線の開通、鉄道延伸・乗り入れを伴う大規模開発・再開発エリアで人口は大幅に増え、若い子育て世代が集中することから社会増に加えて自然増も確認されている。

日経DUALと日経新聞が行った自治体調査「共働き子育てしやすい街2016 総合ランキング」では、20位中(26自治体)、実に東京都の自治体が16、千葉県3、埼玉県、神奈川県各1と東京圏だけで21が入っている。ハード面だけでなく、ソフト面でも他地域との格差が拡大していることが明らかになった格好である。

  

 

(2) 高齢化と消費

1970年に31.3歳であった日本の平均年齢は、30年後の2000年に41.4歳になり、現在(2016年)は46.5歳、そして20年後の2036年には50歳台に乗る。

高齢者人口は、2016年9月15日現在3461万人、総人口の27.3%、男性1499万人、同24.3%に対し、女性は1962万人、同30.1%である。

世帯主65歳以上の世帯は2015年1800万世から2025年には1900万世帯 (総世帯数は逆に5060万世帯から4980万世帯に減少)、同単独世帯は560万世帯から670万世帯に増加し、さらに同75歳以上(再掲)は2015年830万世帯から1080万世帯、同単独世帯は300万世帯から400万世帯へと増加する。

人口統計と家計調査では年齢区分や対象期間が異なるため、一概に言うことはできないが、世帯主年齢が50歳台から60歳台、70歳以上と10歳上がるごとに消費支出は月5万円(全国2人以上世帯)、2人以上世帯が単独世帯になると同12~3万円、それぞれ減少する。

年間商品販売額が人口に比例すると仮定して、2013年の年間商品販売額122兆円を基準に減少額を試算すると、年間商品販売額は2020年3兆円、2025年6.3兆円、 2030年10.2兆円、 2035年には14.5兆円減少することになる。

2015年日本チェーンストア協会加盟57社9362店の売上が13.2兆円と比べても、人口減少が消費に与える影響の大きさが分かる。 

 


これまで家計調査を参考にしたシミュレーションはいくつか発表されている。

① 日本政策投資銀行 人口減少問題研究会 最終報告書(2014年6月)

消費は2010年を100とすると、2040年には90まで減少する(2009年家計調査を基に算出)。費目によって大きなバラツキが見られ、住宅修繕・維持107、医薬品102、交際費100など増加するとされるものもあるが、ほとんどの費目で減少しており、特に教育75、家賃・地代76、外食82、洋服84、通信85、交通87、飲料88などが大きく減少するとされている。

しかし、前述のように消費が人口に比例して減少すると仮定すれば、2040年に減少する人口は2010年対比16.2%、これに高齢化や単身世帯の増加による減少分を加えれば、減少幅が1割に留まることはないと考えるのが自然だろう。

② 経済産業省 産業活動分析(平成24年1~3月期)「高齢者世帯の消費について」

全年齢平均消費支出額(平成21年、総世帯ベース)に対して倍率が高い費目は、60~69歳世帯で園芸品・同用品1.67倍、修繕・維持工事費1.59倍、ゴルフプレー料金1.57倍、国内パック旅行費1.52倍、信仰・祭祀費1.52倍、外国パック旅行費1.51倍、修繕材料1.48倍などである。

また、70歳以上世帯では、介護サービス1.90倍、信仰・祭祀費1.81倍、タクシー代1.75倍、緑茶1.69倍、祭具・墓石1.61倍、パーマ・カット代1.60倍、健康保持用摂取品1.55倍などである。

60~69歳、同(勤労世帯)、70歳以上、同(勤労世帯)という4区分すべてに共通して1.4倍以上なのは、贈与金(祝い金、香典など)、国内パック旅行費、4区分中3区分では、修繕・維持工事費、生鮮果物、信仰・祭祀費、設備器具などである。

一方、4区分すべてで1.0倍を割り込んでいるのは、飲酒代、移動電話通信料、パソコン、音楽・映像収録済メディア、雑誌・週刊誌、交際費など、マーケットサイズがそれなりに大きく、生産年齢であれば当り前と思える費目ばかりである。マーケットの構成が大きく変わるとみることができる。

  

 

③ 農林水産省 人口減少局面における食料消費の将来推計 平成26年 6月農林水産政策研究所

人口減少による影響を加味した食料消費総量(総供給熱量)の将来推計を次の3つの仮定(仮定1;1995年から2012年までの平均変化率のまま推移、仮定2;摂取エネルギー男性2050kcal、女性1610kcal、供給熱量男性2650kcal、女性2110kcal、仮定3;摂取エネルギー男性1900kcal、女性1500kcal、供給熱量男性2500kcal、女性2000kcal)に基づいて行った結果、2012年の総供給熱量3098億キロカロリーを100として、2050年には仮定1で62、仮定2で74、仮定3で71の水準まで減少する。

熱量換算ではあるが、食料が最大で約4割減少する可能性があることは、生産者、流通小売業者など、食品を扱う多くの企業、団体にとって大きな脅威であり、その周辺までの影響を考えれば抜本的な構造転換が必要になる。

これらの試算以外にも、家計調査、将来の人口推計、世帯数推計などからもマーケット構造の大幅な変化をうかがい知ることができる。地域を限定し、シミュレーションすれば、将来のリスク、課題がかなり具体的なレベルで見えてくる。将来に備える上で最低限必要な作業である。




こまつざき・まさはる エム・ビィ・アイ社長 芝浦工業大学工学部情報工学科非常勤講師。76年芝浦工業大学工業経営学科卒、76年イトーヨーカ堂入社。82年産業能率大学入職(経営開発研究本部・主幹研究員)、97年退職、現在にいたる

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