「あたらしい民族服」をコンセプトに掲げ、ユニセックスウェアの「ミタン」を作るスレッドルーツ(京都市)が、自ら二次流通に挑戦する。消費者の手に渡ったミタンの商品を買い取り、修理した上で「プラスになる価値を乗せて作り変え、販売する」と代表・デザイナーの三谷武さん。来年3月までにはスタートしたい考えだ。
(小堀真嗣)
服への〝愛着〟を循環
ミタンは14年春夏に立ち上げたブランド。遠州や播州、尾州など国内産地企業が作る素材や縫製技術、インドやラオスといったアジア圏の手織り物も駆使して作る日常着だ。三谷さんが可能な限り物作りの現場に足を運び、独自の素材開発とともに、その背景にあるストーリーの発信にも力を注ぐ。「愛着を持って、長く着続けてもらえる物を作る」。この考えがミタンの根底にあるからだ。
当初から「ブランドに関わる人たちとの関係を継続していきたい」と商売の持続可能性も追求してきた。リペアサービスはその一環。二次流通はその発展形だ。購入された商品を小売り価格の何割かで買い取り、新たに作り変えて販売する。二次流通によって循環の輪を広げようとしている。
三谷さんは「リペアサービスである程度は(生産者の)責任を果たしていると思う」としながらも、「自然環境や人に対して少なからず負荷をかけて作っているのに、自分たちの服を含めて使われていない服が多い状況は不可解」と考えていた。
「今の服はクオリティーが上がっているはずなのに、着用期間は短くなっていないか」とも指摘する。オークションや「メルカリ」のような仕組みには肯定的だ。「自分たちも物が長く使われ続ける仕組みを作り、その価値を伝え、需要を掘り起こしていきたい」という。
通常は卸先とのバッティングを避け、自社ECサイトでの販売をしていないが、再販商品に限りサイトを設けて販売する。
環境、人への負荷小さく
長く着続けてもらえる物作りを追求する大きなきっかけは、13年にバングラデシュで起こったラナ・プラザの倒壊事故だという。発注者の目が行き届かない所で、トレンドとともに低コストとスピードを追い求めたアパレル業界の問題が浮き彫りになった出来事だ。
「自分たちも量産品を作っているので、大量生産に反対の立場ではない」と強調する一方、作り続けることに「葛藤もある」という。だからこそ、「作った物は可能な限り長く、愛着を持って使い続けてほしい。自然環境や人への負荷が小さくなる物作りをしたい」と三谷さん。物作りの背景を丁寧に伝え、リペアサービスを地道に続けてきたのはそのためだ。
その姿勢はコレクションに表れている。毎シーズンの新作は全体の2割弱。ほとんどが継続している定番品だ。インドの手紡ぎ、手織りによる綿生地であるカディのシャツのように最初のコレクションから作り続けている物もある。基本的に発注するメーカーは変えない。発注した生地は使い切るまで使い続ける。定番の生地は自ら在庫を持ち、4~5月ごろの閑散期に縫製してもらう。自分たちの目の届く範囲で共存を目指し、互いに無理をしない物作りを続けていくことを強く意識している。
「定番の生地は、年2回ほど量産をお願いできるようになってきた」という。「機屋さんとしては大した量ではないと思うが、他にもうちのような会社があれば、みんなで技術のある事業者を支えていける形を作れるのでは」と考えている。