美希刺繍工芸、メス使って加工

2015/03/27 07:06 更新


 美希刺繍工芸(広島県福山市、苗代次郎社長)は、刺繍機にオリジナルのメスを取り付けてカットして縫うという技術をはじめ、素材開発を強化している。経糸のみをカットする手法の「パンクカットクロス」や、プラスチックをカットして縫いつける技術も開発。最近では経糸カットによるジーンズのダメージ加工の受注も増えつつある。

 パンクカットクロスは、生地の表面を覆う経糸を部分的にカットすることで、経糸の下に埋もれていた色の付いた緯糸が浮かび上がる。洗いをかけることで経糸が膨らみ独特の生地表面を生み出す。ジャパンテキスタイルコンテスト2014には、岡山のショーワのウールデニムを使ったパンクカットクロスが入選した。

 カットして縫いつける技術はこれまで革製品などで多く使われてきたが、新たにプラスチックを特殊なメスでカットして縫いつける「3D刺繍」も開発。カットしたパーツを、全くずれることなく生地に縫い付ける技術が特徴的だ。

 また、レース調の「ドロー刺繍」も打ち出している。針で大きめの穴を作り、その回りを刺繍糸でかがることで、レースやパッチワークに似た表情の生地を作ることができる。薄地織物からニットまで、スカーフやストールへの刺繍を見込んでいる。

 最近ではダメージ加工ジーンズの生産も増えてきた。経糸をいったん全て切って、当て布をして再び縫うことで、ダメージジーンズを作り出す。機械でプログラミングしてカット、刺繍をすることで、切れ端の糸の長さまで全く同じ表情のダメージジーンズを作ることができる。

 生地や革製品をカットするメスは全てオリジナルで生産するなど、物作りの基礎からこだわる同社。刺繍というアプローチからのテキスタイル開発は業界にとっても珍しい。「ぱっと見てすごいテキスタイルを作っていきたい」と今後も素材開発に力を入れる。



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