中国で「内巻」(ネイジュアン)というネットスラングが流行している。意味は「閉鎖的な環境での激しい競争」を指す。もともとは非エリート層の過酷な労働環境や、大学での厳しい課題などに対して使われていたようだが、最近では中国経済や産業構造を表現する言葉に変化している。
その代表が中国の自動車市場だ。政府の産業振興策もあってEV(電気自動車)メーカーが乱立した結果、価格競争が激化した。一時の500社以上から現在は百数十社まで淘汰(とうた)されたと見られるが、それでも消耗戦は終わっていない。中国自動車工業協会が昨年発表した文書では、コストを下回る価格で販売しないことを呼びかけ、販売店の業界団体も「『内巻』式競争に反対し、質の高い発展を促進する提案」を発表した。
内巻の構造は繊維も同じだ。中国の化合繊生産量は24年が7900万トン。10年の2900万トンから2.7倍にも伸びた。世界の人口増や新興国の経済成長を踏まえても、明らかに過剰生産なのがわかる。しかもポリエステルを中心に、大増産の計画はまだまだ続く。
景気停滞で中国市場からあふれた製品は、安値で海外市場に流れる。東南アジアでビジネスをする日本企業の担当者は「採算割れと思えるほどの安値で売り歩いている」と嘆く。中国を飛び出した内巻に世界が翻弄(ほんろう)されている。
