最近、英国出身のある写真家と話す機会があった。レイヴカルチャーを記録した作品などで知られる彼女は、50歳を機にそれまでの住まいや持ち物を手放し、スコットランドの小さな土地へ移り住んだという。今は自ら家を建て、畑を耕し、家畜とともに暮らしながら撮影を続けている。
SNSで世界中の情報に触れられる時代になって久しい。画面を眺めているだけで、あらゆることを知った気分になる。最近はその膨大な情報に疲れている人も多い。そこへ生成AI(人工知能)が登場し、答えを最適解のように示してくれるようにもなった。便利である一方で、実際には何も体験していないまま、物事を分かったような気になる状況はますます加速していくだろう。
彼女との会話では、アルゴリズムでたどり着けないような事柄に触れることができた。一見、簡単に情報へアクセスできる環境だからこそ、実際に足を運び自分の目で確かめることの意味は大きくなっている。そうした経験を積んだ人の存在も、これまで以上に価値を持つようになっていくだろう。
(平)
