《めてみみ》アジアを揺るがすトランプ関税

2025/04/08 06:24 更新NEW!


 トランプ関税がアジアのサプライチェーンを揺るがしている。業界識者らは「高関税を課せば米国はおろか世界まで不況入りする。関税はディールの材料であり、文字通り課すとは考えにくい」と想定していた。しかし「タリフマン」(関税男)を自負する大統領は中国やASEAN(東南アジア諸国連合)各国に30~40%台後半を課す大統領令に署名。公約通りに仕掛けてきた。

 関税は商品価格に転嫁され自国民の負担となる。消費停滞やインフレが再燃しかねず「米国内のインフレ加速などは避けられない」(伊藤忠商事)、「消費が減退し、取引先不振への懸念がある」(カイハラ)などの見方が広がる。

 振り返ればトランプ政権1期目の関税の標的は中国だった。しかし、中国資本の工場がASEANに分散し、そこを拠点に対米輸出を促進した。今回はそれを教訓に、世界全方位に関税を課して封じ込める。ある中国系OEM(相手先ブランドによる生産)企業は「トランプ関税は想定していたがやはり厳しい。今後は日本での販路拡大に注力する」と強調。日本向けのサプライチェーンにも影響が出てくるだろう。

 先行きの不透明感が強まり、株価下落で世界不況の様相も呈してきた。だが、日本の繊維ファッション産業は厳しい局面を幾度も乗り越えてきた。そのレジリエンス(回復力)に期待したい。



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