山下達郎の「クリスマス・イブ」は83年6月発売のアルバム「メロディーズ」の収録曲だ。同年12月にシングルカットされた。88年にJR東海のCMで使われて人気に火が付き、発表から6年6カ月後の89年12月に「オリコンシングルチャート」1位となった。
クリスマス時期に発売する限定盤は86年から毎年、オリコン週間シングルランキング100位以内に入り続けている。24年バージョンも12月18日発表のランキングで初登場7位に入り、記録は39年連続となった。
ロングヒットで国民的定番曲になる以前からファン人気は高い曲だった。バロック音楽を下敷きにしたコード進行もそうだが、特にパッヘルベルの「カノン」をアカペラで再現した間奏の素晴らしさを評価する音楽通は今も多い。
山下さんが8時間かけて48回、1人で声を重ねて録音したという、この間奏部分は何度聴いても胸に迫る。音質も40年以上も前にアナログ機材だけで作られたとは思えないくらい鮮明でみずみずしい。
デジタル技術を使って売れ筋を察知し、早く安く作るウルトラファストファッションを見ていると、音楽も同じように作れるだろうし、それで生まれたヒットもすでにあるかもしれない。ただ、人工知能やアルゴリズムよりも人間の創造力と熱意がなければ、服も音楽も長く愛されるものは作れない気がする。