売れている物が見えにくくなった。というより、誰もが人気と実感できるモノ・コトがほとんどなくなったように思う。タレントやスイーツ、様々な〝推し活〟など常に一定のブームはあるが、教えられて初めて「そうなの」と気付かされるケースが増えた。
特定のモノ・コトにはまった人がその道を紹介するテレビ番組『マツコの知らない世界』を見ても同じ感覚がある。情報の深さやはまり具合に驚くものの、そうした情報を知っても行動に移すのは面倒。そんな人も多いのではないか。
関心がある人とない人の差が激しくなっている気がする。例えばアニメ・キャラクターグッズの集客力はかなり高い。レジ待ちの行列には強い物欲を感じる。
マスマーケティングが通用しないと言われて久しい。その要因は「一人十色」などと指摘される嗜好(しこう)の多様化だ。嗜好・関心をベースに区分した一定規模のボリュームを持つ〝スモールマス〟をどれだけ捉えているか。対象客層が幅広い大型商業施設ほど求められている。
「今はフロアごとに複数個所で行列ができている」(本紙6月14日付)。細谷敏幸三越伊勢丹ホールディングス社長が従来とのMDの違いを説明していた。複数のスモールマスに対応しているということだろう。年齢や可処分所得だけに頼ったマスマーケティングでは売り上げを伸ばすことは難しい。