《めてみみ》ヒットが見えにくい

2024/04/30 06:24 更新


 ヒット商品と言われても、それが見えにくくなっている。ファッション市場内外で話題となるような、メガヒットが生まれなくなっているからだ。卸販売からDtoC(消費者直販)に転換した新興ブランドでは、オリジナル開発した色・柄に特徴のある生地を使った日傘がECで売れ続けている。こうした、知る人ぞ知るヒットが増えている。

 元々コアなファンが多い王道のアメカジの世界では、マニアックなブランドが脚光を浴びた。それらを扱うある地方の個店のオーナーは「90年代のビンテージジーンズブーム以来の盛り上がりで高額の革ジャンなどを購入する若い世代も増えた。だが、ブームが去ったら、どれだけ残るか」と冷静に見ている。

 それぞれのジャンルが細分化してしまった現在、熱狂的なファンが狭いマーケットを深掘りして、ヒット商品が出ても横へ広がることはほとんどない。SNSなど同好の士だけのコミュニティーで完結してしまうからだろう。熱心なファンと一般消費者の熱量の差は明白で、広がることは難しい。

 メンズ分野を担当していると、10代女性に何が流行しているのかを知るのが、つい縁遠く感じてしまう。これからは万人受けする商品開発は難しそうだ。小さなコミュニティーであっても、まずファンに支持され、そのコミュニティーの数を地道に増やしていく方が賢明だろう。



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