輸出額全体の85%を衣料品が占める国がある。インドとミャンマーに隣接するバングラデシュだ。縫製業の最低賃金は月額8000タカ(約1万円)。安さを求めて世界中からオーダーが集まり、世界2位のアパレル輸出国に成長した。
同国の22年7月~23年6月の輸出額は衣料品が引っ張り、過去最高だった前の年度をさらに上回った。ニットと布帛を合わせた衣類品の輸出額は約470億ドルで前年比10%増。ニット、布帛品ともに伸び、欧米向けが大半を占める。欧米市況の低迷を受け、3、4月は前年実績を下回ったが、5、6月は前年を上回るペースに戻し、復調してきた。
同国で多くの人が亡くなったラナ・プラザの倒壊事故から4月で10年が経った。米国はこの事故をきっかけにバングラデシュを関税優遇措置の対象外とし、それは今も続く。それでもこの10年で同国の衣料品輸出は倍増した。「世界の最貧国の一つ」と言われた国は縫製業を軸に経済成長し、26年には後発開発途上国(LDC)からの〝卒業〟が見込まれる。
安く作ることは重要だが、限界はある。中国に加えベトナムなどでも縫製業に人が集まらなくなってきた。いずれバングラデシュもそうなるだろう。誰が服を作ってくれるのか。人間か、それとも機械か。繊維・ファッション産業が抱える大きな課題だ。