日本漢字能力検定協会が毎年12月に発表する「今年の漢字」は「戦」だった。選ばれた理由として、サッカーのワールドカップで日本代表が世界の強豪国との「戦い」に勝利するなど明るい話題もあるが、ロシアによるウクライナ侵攻が挙げられた。戦争が今年の世相を示すキーワードの理由に入るのは好ましくない。
ファッションビジネス業界の「今年の漢字」は何だろうか。コロナ下で業績を回復させるために各社が努力し「戦った」という意味で、「戦」はその一つ。行政による行動制限がほぼなくなり、商業施設などでのリアルな集客イベントの久々の再開を示す「再」や、コロナ禍以前には及ばないとはいえ、街への人出や売り上げが「戻りつつある」ことを表す「戻」も、前向きに捉えらえる漢字として選んでおきたい。
「再」とも関連するが、「実」も前向きな漢字に入れたい。今年に始まったことではないが、コロナで在宅時間が長くなり、SNSでのコミュニケーションやECでの買い物が拡大したなかで、リアルな場の価値が再認識されたという意味だ。
実店舗でのスタッフとのコミュニケーションを求める客は増え、商品の提案や店作りで「わざわざ来てもらえる」理由を作れたブランドやショップがますます支持されている。来年は業界がさらに前に進む漢字を選びたい。