《めてみみ》「傷だらけの天使」

2022/11/21 06:24 更新


 自らのファッションのルーツを振り返ると、少年時代に見たテレビドラマ「傷だらけの天使」の存在がある。若き日の萩原健一さんと水谷豊さんが登場する70年代のドラマ。ファッション関係者にもファンが多いが、今の若い世代にはピンと来ない人も多いだろう。このドラマの衣装提供を通じて、菊池武夫と「ビギ」が一躍脚光を浴びた。

 若い頃、ファッションの知識を学ぶため、映像をむさぼるように見ていた時期がある。意識したのはカンヌ国際映画祭のパルムドール受賞作品。「タクシー・ドライバー」からはベトナム帰還兵のトラウマとミリタリースタイルを、「山猫」からは没落するイタリア貴族の哀愁とクラシックを背景にしたスタイルを学んだ。

 多くの映像を見た経験が役に立つこともあった。あるファッションショーの冒頭に流れたのは、タクシー・ドライバーのイントロのナレーション。そんな音のヒントから、コレクションとタクシー・ドライバーとの共通項を探っていく。コレクションは知的なゲームである。

 傷だらけの天使の放映から、間もなく半世紀を迎える。改めて見るのも悪くない。古いものの中に新しいアイデアが隠れていることもある。菊池武夫の当時の服から70年代という時代を感じつつ、英国サビルローのトミー・ナッターの影響を探してみるのも面白い。



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