フランス映画の巨匠、ジャンリュック・ゴダール監督が亡くなった。59年に「勝手にしやがれ」で長編映画デビューし、65年に「気狂いピエロ」でヌーベルバーグ(新しい波)の旗手となった。ヌーベルバーグとは50年代末から60年代末をリードした仏映画のムーブメントで、ロケ撮影中心、同時録音、即興演出などの手法が特徴だ。
ゴダール作品から、自由な精神や美しい色彩を散りばめた映画の魅力を学んだ。そして、そこに登場するジャンポール・ベルモンドの帽子のかぶり方やスーツスタイルに憧れた。正統派のエレガンスではない斜に構えた着こなしだ。
映画とファッションは相互に影響を与え合う。時に音楽も含めて、それらはジャンルを超えて時代を反映した新しい流れを生み出す。例えば、80年代末にニルヴァーナが起こした「グランジ」(薄汚い)というロックムーブメントは、同時期にファッションにおいてはマルタン・マルジェラやダーク・ヴァン・セーヌによる「シャビー(貧乏な)ルック」として登場した。いずれも80年代の高級志向に対するアンチテーゼとしての時代のムードを反映したものだ。同時期に公開されたガス・ヴァン・サントの映画「ドラッグストアカウボーイ」からも、そんな時代の空気が感じられる。
亡き巨匠は今という時代をどう感じていたのだろうか。