日本ではバブル経済崩壊後の90年代半ばからデフレが続いてきた。それが今、エネルギーや原料価格の高騰、円安などでインフレが進みつつある。「インフレと円安の同時進行は初めての経験。どう対応すれば良いかなど誰にもわからない」と繊維商社の幹部は嘆く。
価格を引き上げる必要がある。できるか、できないかで力量の差が出る。付加価値戦略など取り組みの成果が試される。一方で徐々に価格を上げながらも培ってきたコスト競争力を生かす手もある。期待したいのがインバウンド(訪日外国人)需要。他の主要国と比べて日本のインフレ率はまだ低い。インバウンドの受け入れが緩和され始め、安くて品質が良い商品を買ってもらう絶好の機会だ。円安が後押ししてくれる。
刻々と変わる情勢に対し、先回りして手を打つ必要がある。後手に回ると対症療法に終始しがち。経営者の力も重要だが。
「若い社員がすぐに辞める」と聞くことが増えた。本社が来春卒業予定のファッション専門学校生に行った就職意識調査では、ファッション業界への就職を希望する学生の比率は9年ぶりに90%を下回った。若い人材が入らず、入ってきても長続きしないのでは、発展は見込めない。今一度人材を大切にし、投資する必要を感じる。