「すぐ役に立つ人はすぐ役に立たなくなる」。検索すればわかるので誰が言ったかは書かないが、社会に出てすぐに使える知識や技術だけの人は早晩、通用しなくなるという意味だ。駆け出し記者時代に知った言葉で、今も時折思い出す。
取材で多くの人にお会いするが、確かに物事の成り立ちや理屈を理解した上で、自分だけでなく他者の知恵や経験も仕事に生かそうとしている人は、後に出世したり成功したりする確率が高い。
そういう人は話題も豊富だ。ひけらかすような態度はまず見せないが、話していると自身の専門分野だけでなく政治、経済、社会や文化など世の中で起こっていること全般に関心を持ち、情報を常にアップデートしていることもわかる。
一方、その時々で主流のビジネスモデルやマーケティング手法を見つけては、自分の仕事に生かそうとする人は、ある時期に一定の結果を出して評価されることがあっても、取材して数年も経つといなくなってしまうことが多い。
最短、最速で結果を出す「ライフハック」的なコツに頼っても、目先の問題を要領良く処理できるようになるだけで終わる。仕事に必要なのは、目の前の現象がどうして起こったか理解し、次にどう変化するかを見通す力だ。それは時間をかけて世の中の仕組みを学び続けることでしか会得できない。