あるセレクトショップは、緊急事態宣言がまだ解除されていなかった5月中旬のタイミングで都内の路面店の営業再開に踏み切ったところ、客が殺到した。「商業施設の店舗はまだ再開していないタイミングでしたからね」。
販売員の説明によれば、普段使っている施設内の店舗が開いていないので、営業中の店舗に来店が集中したということらしい。この店は5月の最終週だけで見ると、売り上げが前年の同一期間に比べて3割ほど伸びたという。
自粛で店に来ることができなかった客が営業再開後に、押し寄せた例はほかにもある。6月3日から営業再開した都内のアップルストアには、「密」を避けるための入店制限を設けたせいもあるが、店前に長蛇の列ができていた。
一方、冒頭の店とは違う別のセレクトも、宣言解除前の5月下旬に再開したが、こちらは最終週の来店客数は前年同期に比べ3割程度にとどまった。買い方も「目当ての商品を手に取ると、さっと買ってお帰りになるお客様が多かった」という。
6月第1週、都内では感染者数の2ケタ増が続いた。営業自粛要請が再び出るかまでは分からないが、緩和と引き締めが続くことは覚悟しておいた方がいい。こんな時小売りがやるべきことは、不要不急でも「やっぱり行きたい」と思われるよう、店の魅力を磨くことだろう。