《めてみみ》ウェブでできない仕事

2020/04/22 06:24 更新


 在宅勤務などが増え、ウェブを活用した商談や会議など、慣れない仕事に悪戦苦闘している方々も多いと思う。システムを整えることはできても、会話はどこかぎこちなく、対面時の半分もコミュニケーションできていない気がする。何よりも接続を切った後の疲労の度合いが違う。記者も含め、年齢のせいだけではないだろう。

 とりわけ、繊維・ファッション商品はスペックや機能性の説明だけで成り立つものではない。その商品が発する雰囲気、作る人や売る人の背景にある物語などを含めた全体感の中で評価される部分が大きいはず。同じ商品であっても、Aさんは売れず、Bさんは顧客が喜んで買うという現象も多い業界だ。

 ある地方のメーカーの社長とウェブ会議の話題になった。一番気にかかるのは、対面シーンが少なくなれば、目指すべき目標に対する社内の一体感が薄れていくことだという。「直近の数字の厳しさではない。経営トップとして一番すべきこと、社員を同じ方向に向けるという仕事がしにくくなる」と嘆く。

 しばらくこの状況が続くことは間違いない。様々なツールを何とか使いこなしながら、難局を乗り切っていきたいものだ。ただ、道具はあくまで道具。上手に活用しながらも、一方でウェブではできない仕事とは何なのかを改めて見極めるチャンスでもある。



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