《めてみみ》果実を得るまで

2019/12/11 06:24 更新


 鹿児島県の霧島と言えば全国屈指の温泉地。天孫降臨伝説の高千穂の峰、霧島神宮など多くの名勝地を抱える人気のスポットだ。近年は外国人観光客も増え、ゆかた姿を楽しむアジア人も多い。

 温泉郷の高台の一角に霧島国際ホテルがある。ダイワボウグループの大和紡観光が71年に開業したものだ。社史をひも解くと、完工披露パーティーには、政財界の関係者が出席したほか、アナウンサーの宮田輝が司会を務め、渡辺はま子や佐良直美が出演した。年配の読者なら、メンバーの豪華さに納得することだろう。

 戦後の日本の紡績業は、ごくわずかな時期を除き、苦難の道を歩んできた。ホテル開業の翌年にはドルショックがあり、その後もオイルショック、輸入品の増大と経営環境は厳しさを増す。霧島国際ホテルも国内ハネムーン需要の伸びと沈滞、韓国人ゴルフ客の増加と減少など浮き沈みを経験、今は団体から個人客誘致へと努力を重ねている。

 ホテル開業から10年余り後、ダイワボウ情報システムが設立された。事業は躍進し、今やIT関連事業はダイワボウグループの屋台骨。上期決算ではIT関連事業が売上高、営業利益の大半を占めるに至る。繊維・ファッションビジネス業界でも今後、様々な事業の多角化が進むだろうが、芽を育て果実を得るには、それなりの時間が必要だ。



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