《めてみみ》無理な相談?

2019/09/05 06:24 更新


 アフリカ開発会議(TICAD)が先週、横浜で開かれた。日本政府が主導する形で93年から開き、今回で7回目。アフリカで影響力を強める中国への牽制(けんせい)を意識した「横浜宣言」が採択され、民間企業によるアフリカ開発の促進支援などが話し合われた。

 繊維・ファッション業界でもアフリカへの注目がにわかに高まってきた。いくら人件費が安いとはいえ、日本からの遠さや素材、資材の供給面など課題が多いため、「欧米向けを狙う一部の動き」と見られていたが、活用が進みそうだ。

 軸になるのがエチオピア。縫製業向けの工業団地を作り、積極的に外国企業を誘致している。東レインターナショナルは欧米向けで、すでにエチオピア縫製を始めた。伊藤忠商事はエチオピア繊維産業開発協会及びエチオピア投資委員会と、繊維産業振興に関する覚書を締結した。

 こうした取り組みは、進出した国の繊維産業の育成や振興につながり、欧米市場を攻める一手でもあるので歓迎したいが、一方で「ついにアフリカまで行ってしまったか」という思いもある。この数十年、繊維業界は人件費の安さを求めて生産地を移してきた。戦略なのでそれをいけないと言うつもりはないが、そろそろこの安さを求める競争から抜け出し、新たな事業モデルの確立を願うのは無理な相談なのだろうか。



この記事に関連する記事