猛暑日が続き外回りのビジネスマンには厳しい季節。クールビズが定着した日本では紳士スーツは肩身の狭い思いを強いられている。通勤電車の中を見渡しても上着を着ている人は皆無に等しい。異常気象はこれからもひどくなっていくだろうから、ビジネススタイル=スーツという固定観念は通じなくなる。というより、すでに崩壊してしまった。
世界的にもスーツの軽量化、ストレッチなどコンフォート性の追求が主流だ。欧州の高級服地メーカーでさえ高機能素材の開発は避けられない。これまでのようにスーツがビジネスマンのユニフォームとして浸透してきた日本が異常だったのかもしれない。ただ、最近は若い世代に高機能な合繊を使ったセットアップが人気だ。
クラシックなスーツスタイルは消滅してしまうのか。そんなことは決してない。中国をはじめとしたアジアの紳士服店の若手オーナーが救世主になりつつある。まだ限られた層ではあるが、高級ウール生地を職人技を駆使して仕立てたテーラードスーツがステイタスシンボルであり、ファッションとして憧れの存在でもある。
日本でも行き過ぎたカジュアル化の反動からタイドアップしたスーツスタイルが見直され始めた。記者の後輩でも一部の若手社員に熱狂的なスーツ好きがいる。オーダーメイドスーツへの関心も高まっており、スーツが復権する日はそう遠くないだろう。